表題番号:2006B-054 日付:2007/03/21
研究課題仏典注釈書からみた古代日本における漢籍受容の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 講師 河野 貴美子
研究成果概要
 本特定課題研究では、主として奈良末・平安初期の興福寺僧善珠が撰述した仏典注釈書を通して、当時の日本における漢籍受容の状況や、中国から伝来した学術、文化の諸相について明らかにするべく、研究を進めた。研究の方法は、現在伝存する写本、版本等の諸本の実見調査を行い、本文の校訂を含む基礎的な作業をまず固め、そのうえで、注釈に利用されている漢籍や古辞書からの引用文について検討を加えていった。そうした作業、考察を通じて、古代日本の知識人が、いかなる書物を利用していたか、またそれらを彼らがいかに利用して漢文を読解、執筆していったかを捉えようとした。と同時に、古代日本の仏典注釈書には、これまで見過ごされてきた佚書の佚文資料が数多く残されているなど、貴重な発見も少なからずあった。
 以上の研究の成果を、2006'清華大学日本言語文化国際フォーラム(発表題目「日本古代の仏典注釈書にみる漢籍の受容―善珠撰述書を中心に―」2006年5月、於中国・清華大学)、国際シンポジウム 世界における日中文化と文学(発表題目「日本古代の漢籍受容―善珠と安澄の場合―」2006年9月、於中国・東北師範大学)、国際学術シンポジウム ブックロードと文化交流―日本漢文学の源流―(発表題目「古代日本の仏典注釈書に見る漢籍の引用と漢語知識」2006年9月、於中国・浙江工商大学)、2006(平成18)年度早稲田大学国文学会秋季大会(発表題目「奈良・平安期における漢籍受容の一考察――善珠撰『因明論疏明灯抄』を手がかりとして――」2006年12月)等の国際学会を含む学会で発表し、漢籍を専門とする海外の研究者とも学術交流を行えた。
 また、同時期における漢籍受容の問題を考える一環として、『日本霊異記』や三善清行における漢籍受容についても研究を進め、早稲田大学比較文学研究室第194回月例研究発表会(発表題目「伝と記と小説と―『捜神記』の出現とその享受をめぐって―」2006年6月)、 東アジア日本学国際シンポジウム(発表題目「三善清行と干宝『捜神記』」2006年10月、於中国・洛陽外国語学院)、早稲田大学日本宗教文化研究所・浙江工商大学日本文化研究所交流協定締結記念シンポジウム「神仙伝・高僧伝の流伝と展開」(発表題目「鬼之董狐―干宝と三善清行を結ぶもの―」(2006年12月、於中国・浙江工商大学)等で発表し、いずれも順次論文化を進めている。