表題番号:2006B-051 日付:2007/03/07
研究課題古典期マヤ社会における地方センターの成立と発展
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助教授 寺崎 秀一郎
研究成果概要
 本研究では、従来、調査を重点的におこなってきたホンジュラス共和国西部、ラ・エントラーダ地域との比較研究のため、同地域より南西に約50Km離れたコパン遺跡周辺部のでの調査に参加した。コパン遺跡は先スペイン期のマヤ文明を代表する考古遺跡の一つであり、ユネスコ世界遺産にも登録されている。19世紀末にピーボディー博物館による学術調査がおこなわれて以来、アメリカ人研究者を中心に調査研究がおこなわれ、現在でもマヤ考古学研究の拠点の一つとなっている。
 近年は、中村誠一氏が10J-45、ヌニェス・チンチーヤグループなどコパン遺跡中心グループに隣接する地点における調査修復を精力的におこなっているが、本研究期間において、同氏を中心とするコパン考古学プロジェクトの協力の下、コパン・ルイナス村からオストゥマン部落へ至る途中に位置するヌエバ・エスペランサ地区で9H-1・2として登録されている居住グループの発掘調査がおこなわれた。当該遺跡は過去の調査でその存在は知られていたが、小規模な居住グループであり、また、個人所有地であるために、発掘調査がおこなわれたことはなかった。今回は、土地所有者の住宅建設に伴う記録保存のための緊急調査であった。
調査の結果、古典期中期における2段階の居住シークエンスが確認された。建築用石材の選択や加工など、東南マヤ地域最大のセンターであったコパン政体の周縁部に位置するラ・エントラーダ地域とは著しく異なるが、埋葬から出土した副葬品に代表されるように物質的な豊かさという点において、周縁地域とは格差が確認され、コパン政体が東南マヤ地域で卓越していた様を再確認した結果となった。
 また、現地滞在中には、ホンジュラス国内における考古学調査・研究を統括する国立人類学歴史学研究所所長ダリオ・エウラケ所長、人類学調査研究部門の責任者ヴィト・ベリス部長と面会し、今後の方針、箇所間協定の可能性について協議をおこなった。