表題番号:2006B-049 日付:2007/03/21
研究課題戦後ニューヨークにおける日本人アーティストの活動に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助教授 坂上 桂子
研究成果概要
  今年度は、4月、ならびに9月の2回にわたり、ニューヨークにおける現地調査を中心に行った。
調査は、おもに2点に絞って行われた。

 ①ブルックリン美術館での調査
  ブルックリン美術館のアートスクールは、戦後、多くの日本人アーティストが所属したことで知られている。彼らの大半は、滞在ヴィザをとることが目的であった。しかし、河原温、荒川修作をはじめ、今日活躍する大半のアーティストが、同校に在籍、しかも同じクラスに学んでいる。そのため、活動の拠点としての役割は大きいといえる。しかし、すでに同校が現存しないために、その現状は把握しにくく、今回は、ブルックリン美術館が保有する資料によって、これらの調査を行った。
 その結果、資料の大半は、同校における展覧会活動であることがわかった。それらには、展覧会の出品者や売りたてなどの一部があるが、作品名や、具体的作品の図像イメージはない。
 また在籍者の在籍記録も残されていることがわかった。しかし、これも、一部であり、かなりの部分欠如しており、すべてが完全な記録として残されているわけではないことがわかった。

 ②ニューヨークでのアーティストたちからの聞き取り調査
 ①の調査における不完全な部分を当時、実際に同校で学んだアーティストたちから聞き取り調査を行った。ニューヨーク在住の数人のアーティストたちから、実際に、当時の様子をインタヴューし、情報を集めた。

 ③考察と研究の成果の一部発表
 戦後ニューヨークで活動した日本人アーティストのなかから、2人の女性アーティスト、草間彌生と小野洋子をとりあげ、二人を比較検討しながら、彼らの活動の一端を考察したものを論文にまとめ、発表した。ここでは、外国人アーティストとしての二人が、それぞれ異なった方法においていかに、西洋の主流のアートの流れの中で作品をつくり、活動を展開したかを比較対照しながら検討した。また、外国人というだけではなく、女性であることが、どのような意味をもちえたかも、考察の際、重要な問題となった。彼女たちのとった制作の方法、発表の方法は、1960年代だけではなく、今日におけるアーティストたちもいまだ抱える問題として残されており、その意味で、今日的課題であるといえることを明らかにした。
 
 これらの調査は、戦後のニューヨークで活動した日本人アーティストたちのほんの一端を示すものにいまだかわりなく、今後も引き続いての調査が必要となる。