表題番号:2006B-041 日付:2009/03/03
研究課題線画刺激の標準化とその活用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 西本 武彦
研究成果概要
従来の認知心理学研究では刺激として言語的材料が使用されることが多かったが,近年,さまざまな研究分野において絵画刺激への必要性が高まっている.こうした要求を背景に我々は,記憶・認知実験用の視覚刺激に使用する具象線画(具象概念を描いた線画)と無意味線画(通称,droodle)の標準化を行ってきた.
droodleが有するイメージ性の臨床テストへの利用可能性が示唆されたことを受け,2005年度特定課題研究費助成では,ラベル(droodleに付与された意味的解釈)の多様性と適合性(解釈の妥当性)の視点から既に収集されていたデータの再分析を行った.その結果,連想力測定用のdroodleを選択する基本的方法を確認することができた(2005年度成果概要参照).
上記のラベル多様性とは,データ収集の手続き上,droodleに予め1個の最頻ラベルが付与された状態で,当該ラベル以外の新規ラベルが出現する度数から計算された数値であった.本年度はラベル未呈示の状態で,99対198枚のdroodleに対して60名の被験者の自由反応データを新たに収集した.これにより指標としての「ラベル多様性」の純粋化を図った.その結果,(a)ラベル多様性と適合性には負の相関がある,(b) ラベル多様性に与えるdroodleの複雑性の影響は少ない, (c)多様性はラベル未呈示条件の方が呈示条件より高い,ことが明らかになった.連想力測定用のdroodle選択について,基本的な方法を変更する必要はないが,(c)の結果から,今年度の分析結果をもとに選ぶのが妥当であるとの結論に達した.
なお,droodleの単独呈示と対呈示の両条件では,ラベル多様性と適合性に違いが出る.今後の課題として,対呈示条件でのデータを収集・分析することにより連想力測定用droodleの幅を広げたい.