表題番号:2006B-033 日付:2007/03/24
研究課題道教の伝授儀の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 小林 正美
研究成果概要
道教の伝授儀研究の基礎作業として、『三皇経』の伝授儀と上清経の伝授儀について研究を行った。
『三皇経』の伝授儀の研究では、『三皇経』の伝授儀の歴史的変遷とそれを作成した教団の状況が明らかとなった。この研究成果は近い将来、論文にして公表する予定である。
上清経の伝授儀については、道蔵本『太真玉帝四極明科経』(HY184)とその他の経典を取り上げて、大洞法師や大洞三景弟子の法位と、上清経の伝授儀との関係について考察し、論文「大洞法師・大洞三景弟子の法位と上清経の伝授儀について」を作成した。従来、唐代の大洞法師や大洞三景弟子は全員が上清派の道士と見なされてきたが、本論文では唐代の大洞法師と大洞三景弟子は全員が天師道の道士であることを解明している。これも、上清経の伝授儀の研究による成果である。この論文は学会誌で発表する予定である。
 三月十一日より二十日まで陝西省西安市を中心に下記の調査を行った。燿県の薬王山博物館の碑林、臨潼市博物館および西安碑林博物館所蔵の北朝期の道教造像を中心に調査し、従来は北魏の寇謙之の新天師道以外にはほとんど未解明であった北朝期の道教の研究に新しい見通しを立てることができた。道教造像を通じて、それが制作された時代の道教界の状況を知ることができるので、道教造像の研究は伝授儀の研究にも役立つのである。
 西安碑林博物館では初公開の唐・開成元年四月二十日建立の「大唐廻元観鐘楼銘并序」の碑文を実見できた。
 戸県重陽宮、周至県宗聖宮・楼観台の調査では元代の全真道関係の多くの原碑を写真に収めることができた。さらに扶風県法門寺、西安市大善興寺、小雁塔を参観し、唐代の密教と仏教寺院の規模について認識を深めた。同時に、唐代には仏教の寺院に比肩する規模で存在した道教の道観についても調査する必要あると痛感した。その点で今回調査した周至県宗聖宮は大いに参考になる。