表題番号:2006B-031 日付:2007/03/23
研究課題新たな学校運営システムと教育関係の動態的変化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 喜多 明人
研究成果概要
本研究は、新たな市民参加型の学校運営システムであるコミュニティ・スクール=「学校運営協議会」制度に関するものである。2004年の地方教育行政法の改正をへて法制化されたこのシステムは、2006年度中までに全国84校で導入され、2007年度にはさらに151校で導入される予定である。ますます増えていくだろうこの制度の可能性と運営の課題を探った。
研究方法は、文部科学省とは別に市独自に地方教育行政法の趣旨を発展させ、先駆的に学校運営協議会設置に取り組んでいる京都市への訪問調査というかたちをとった。
(1)第一回調査
聴き取り調査対象:京都市教育委員会2名および京都市洛央小学校3名(学校長ほか学校運営協議会委員2名)
(2)第二回調査
「平成18年度京都市小中一貫教育特区小中一貫コミュニティ・スクール教育研究発表会」へ参加
上記の調査より、学校運営協議会は「学校・地域協働(教育)型の組織」と「問題解決型の組織」と2つの機能を持つことがわかった。「学校・地域協働(教育)型の組織」としては、「学校」(校長)の姿勢と一定の「地域性」があれば、学校運営協議会を通じて、学校や家庭、地域の連携、協力、調整が図られ、学校教育に地域の人材や素材が活用される、いわゆる学校への地域の教育力の活用や、地域にねざした教育が実現できる可能性を持つ。「問題解決型の組織」としては、学校(教職員)と保護者、地域住民との間における学校・子どもの実態、問題の共有化と解決できる可能性を持つ。
但し、学校運営協議会が経営主体(マネジメント能力)をもつ可能性は未知数である。さらに、学校運営協議会の場合、一定の権限と責任をもってという部分が、子どもが委員としては協議会に参加できない理由となっているおり、協議会の発足によって、子どもの参加や意見表明の機会が減ってしまう傾向にある。これは子どもの真のニーズ(≒子どもが日常的な学校生活で見出す問題)が見えにくくなることにつながり、子どもの意見表明、参加の機会の限定とおとなとの差別化が学校運営協議会の今後の課題として挙げられた。
なお、詳しい研究成果は第6回教育学研究発表大会で発表を行なった。