表題番号:2006B-026 日付:2007/03/28
研究課題西洋史における社会的エリートの機能と国家・政治システムの動態的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 井内 敏夫
研究成果概要
本研究グループは、総合研究機構のプロジェクト研究所の一つであるヨーロッパ文明史研究所と同一の研究テーマを設定して共同研究を行っているが、そのヨーロッパ文明史研究所が本2006年度に締め括りの年を迎えるにあたり、『ヨーロッパ史のなかのエリート――生成・機能・限界――』(太陽出版、2007年3月)と題する16篇の論文集を共同で刊行した。
本論文集は、エリートがヨーロッパにおいて政治的あるいは社会経済的に果たしてきた複雑な機能とその実態を歴史的に検討しようとするものである。その際、われわれは、ヨーロッパの国家・社会は小規模で多様な社会的中間団体の存在をその構造的特質とするという理解に基づき、エリートを大小様々な社会集団の内部における最も活動的な社会層ないしは個人と捉えることから出発した。そのため、かならずしも国家を直接的な視野に置かず、あるエリート集団の形成過程やその性格に的を絞った研究も少なからず含むこととなった。各論文の主題は次のとおりである。「民主政期アテナイの富裕者と政治」「テキストとしての『ゲルマニア』」「カール大帝期の宮廷とエリート」「中世初期領主制と鉄工業者」「シトー会修道院『ヘンリクフの書』にみる13世紀ポーランド社会の変容」「大シスマ(1378-1417)と学識者」「14~16世紀初めのドルドレヒト市行政職就任規定と執政門閥」「近世スイスの都市門閥」「合意政治のコスト」「近世ドイツにおける神学者の権力と《言説・メディアの力》」「近世ポーランドにおけるヘトマン(軍司令官)職」「19世紀前半期のドイツにおける「コルポラツィオン」と「アソチアツィオン」」「19世紀バルト海沿岸諸県の啓蒙・教育活動とロシア帝国」「ヨーロッパ・ロシア西部、辺境諸県の統治問題 1896-1903年」「サルバドール・ムニョス・ペレスとアンダルシアの反革命」「政治への歴史家のかかわりに関する一考察」。至らぬ所はあるにせよ、こうして東西ヨーロッパの社会集団やその指導層に古代から現代にわたって直接的あるいは間接的に光をあてることにより、ヨーロッパの国家と社会が歩んできた道筋をまた別の角度から浮かび上がらせることができたように思う。