表題番号:2006B-014 日付:2007/03/13
研究課題国際裁判における強制管轄制度の意義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 河野 真理子
研究成果概要
 国際裁判における強制管轄制度の意義の題目の下で、主として、国際司法裁判所と国際海洋法裁判所の強制管轄制度についての研究を行った。また、国内裁判制度と国際法の関わりという観点から、国家免除に関する研究も付随して行った。
 国際司法裁判所の強制管轄制度については、特に1990年代以降、裁判所で判決が出された事件で、原告国が強制管轄制度を濫用し、被告国が訴訟手続に応ずることを余儀なくされた事例を取り上げ、そのような方法で裁判所が利用されることについて、裁判所自身がこれをどのように処理しようとしているのか、また個々の裁判官がこのような裁判制度の利用をどのように考えているのかを分析した。その成果は、2006年4月に共編著を出版した、カナダのマッキーニー教授の記念論文集への寄稿で公刊予定となっている。
 国際海洋法裁判所の強制管轄制度については、この制度が国際司法裁判所よりも強い強制管轄制度を実現しているにもかかわらず、同裁判所ではまだ本案に関する判決が1件しかないことに鑑み、その制度の利用例の多い、速やかな釈放判決と暫定措置命令の事例を分析した。これらの2つの制度は本案の請求とは異なり、限定的な機能しか果たしえないが、少なくとも原告国がその請求の今日生成を利用し、被告国がこれに応じざるを得ないという観点からは、国際海洋法裁判所の現代的機能を分析する上で極めて重要な意味を持つと考えられる。この研究の成果は共著の著書への寄稿の形で公刊済み、あるいは公刊予定である。
 最後に、国際裁判所にかかわる研究ではないものの、国内裁判所で私人が外国国家を訴える場合に、国内裁判所が外国国家に対してどの程度の裁判権等を有するかを考える国家免除に関する研究も行った。この分野でも外国国家が無条件に裁判権等からの免除を認められるのではなく、条件が満たされれば、裁判権に服さなければならない場合があるという意味で、国内裁判所の外国国家への裁判権の行使の可能性も拡大しているといえる。その成果は、国際私法判例百選と国際法外交雑誌への寄稿で公刊した。