表題番号:2006A-936 日付:2007/03/21
研究課題行政法関係における差止請求と公権力概念
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院法務研究科 教授 岡田 正則
研究成果概要
 本研究は、行政救済法における「公権力」概念の機能を歴史的脈絡から解明することによって、行政訴訟における差止請求(ひいては抗告訴訟全体)の権利救済上の役割を提示し、最終的には、行政訴訟および民事訴訟における訴訟類型の適用に関する法解釈の指針および訴訟制度改正による解決方向を示すことを目的としている。
 2006年度の研究では、戦後改革期における国家賠償制度の創設および行政訴訟制度の再編成(行政裁判所の廃止、行政事件訴訟特例法の制定など)を重点的に検討する計画であったが、まだそれ以前の時期に関する作業が不十分であったため、(1)1890年代の関係立法(裁判所構成法、旧民法・現行民法の不法行為関係規定)の検討、(2)国家賠償責任に関する戦前の大審院判例の変遷の検討、(3)国家賠償責任の成否の鍵となる「公権力」概念のヨーロッパおよび日本での形成過程に関する学説史の検討を進めた。後掲論文「明治憲法体制確立期における国の不法行為責任(3)」が上記(1)に対応する研究成果であり、後掲論文「明治憲法体制確立期における国の不法行為責任(4)」が上記(2)および(3)に対応する研究成果であり、後掲論文「日本における行政救済制度の形成史と理論的課題」が上記(3)と戦後改革期の検討に対応する研究成果である。
 なお、論文「明治憲法体制確立期における国の不法行為責任」は今年度中に完結させる予定であったが、「(4)」の分量が大部になったため、これを二分し、後半を「(5・完)」として来年度に公表することとした。この論文によって、日本における国家賠償制度史・理論史研究の欠落を埋めることができ、行政訴訟・民事訴訟を含めた解釈論・立法論の指針を提供できるものと自負している。