表題番号:2006A-930 日付:2007/04/21
研究課題初等中等教育における言語教育の意義と実際―政策と現場からの考察―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 助手 太田 裕子
研究成果概要
 本研究は、初等中等教育機関における言語教育の意義と実際について、政策と現場から考察することを目的とする。本年度は、日本国内の小中学校における日本語教育の実態調査、およびオーストラリアにおける外国語教育政策を中心に研究をすすめた。

 日本国内の日本語教育については、主に日本語を第二言語とする児童生徒(以下JSL児童生徒)に対する日本語教育に焦点を当て、フィールドワークおよび文献研究を行った。文献研究では、JSL児童生徒に対する文部科学省や自治体の取り組みについて研究を進めた。フィールドワークでは、外国につながりのある児童生徒が多数在籍する小学校において教育ボランティア(在籍学級に入り込み学習支援を行う)および放課後支援(JSL児童生徒に対する日本語・教科支援)を行うなど、定期的、継続的に参与観察を行い、JSL児童の言語能力や彼らに対する支援の実態について調査を行った。また中学校・高校におけるJSL生徒の日本語能力調査に参加し、在籍学級での学習場面や生活場面における日本語の実態を観察した。フィールドワークからは、JSL児童生徒の日本語能力や学習成果を捉えるためには、言語背景、教育歴、家庭状況を理解すると共に、彼らを取り巻く様々な支援者が持つ「子ども像」を共有し、協働的にJSL児童生徒を理解して行く必要があることが明らかになった。

 オーストラリアにおける外国語教育については、1970年代から現在までの言語教育政策を批判的に分析し、政策に見られるLOTE(Languages Other Than English)教育の意義やアプローチの変遷と、政策が策定された時代の政治的、経済的、社会的文脈との関係を考察した。今後は、「異文化間言語学習」の理論を取り入れた最近の言語教育政策の動向を中心に、政策、理論、実践の相互関係を考察していく予定である。特に、言語教育を取り巻く環境が大きく変化する中で、言語教育に関わる個々人がどのように考え、行動し、環境に変化を与えてきたかを、インタビュー調査により描き出すことを目指す。