表題番号:2006A-927 日付:2007/03/23
研究課題空間作業記憶における男女の脳機能差について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 客員講師(専任扱い) 東 玲奈
研究成果概要
計画書にて記述の通り、英国ロンドン・キングスカレッジの精神医学研究所(IoP)にて収集してあった脳イメージデータを、IoP独自の脳データ解析プログラムを使用して解析した。 その結果、空間的作業記憶における脳機能の男女差およびに年齢の影響について以下のことが明らかになった。


研究方法: 
8歳から40歳までの健常者30人を対象に、機能的磁気共鳴映像法(fMRI)を用いて、空間的作業記憶課題中に於ける脳活動を記録した。被験者のうち半数の15人は男性(8歳から40歳、平均年齢19歳)、残りの15人は女性(9~34歳、平均年齢23歳)であった。この15人ずつのデータを比較することで、空間的作業記憶に於ける脳機能の男女差及び、加齢によるその機能の変化について調査した。

結果: 
男女両グループともに、空間作業記憶処理に係る脳部位(頭頂葉、後頭葉、後帯状回、運動前野、補足運動野など)の活動が見られたことから、課題・測定の妥当性が確認された。男女比較の結果、女性実験群に於いては、前頭部でより高い脳活動が観察されたのに対し、男性実験群は、頭頂・側頭・辺縁部にてより高い脳活動が見られた。さらに発達曲線に於いても統計的に有意な男女差が見られた。女性は加齢と共に前頭葉をより活動させるようになるのに対し、男性は加齢と共に頭頂・側頭葉をより活動させることが明らかになった。

結論: 
空間的作業記憶に係る脳機能、及びにその年齢による変化には、有意な男女差が見られる。この男女差の原因として、課題遂行時の方策を含む認知スタイルの違い(男性はより視覚空間の全体像を用いた方策を用いるの対し、女性はより言語解析的方策を用いるなど)や、生物学的な脳部位の発達過程そのものの違いなどが考えられる。