表題番号:2006A-926 日付:2008/11/18
研究課題国際社会における法の支配に対する米国の対応―裁判関連の国家実行を中心に―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 助教授 池島 大策
研究成果概要
 国際法において、ポスト冷戦期における超大国・アメリカの果たす役割は、法定立、法執行、法適用などのさまざまな局面において、重要なものであることは言うまでもない。
 しかし、環境問題に関しては京都議定書への参加を拒み、国際刑事裁判所の設立とその活動にも協力をせず、9・11の同時多発テロ以降、特に単独行動主義を強めている米国の姿勢に対して、はたして国際社会における法の支配を遂行貫徹する意思があるのか否か、またその外交目標は何かが改めて問われている。
 米国が(直接または間接に)関与した若干の国際司法裁判所における事件については、米国は一定の独自の論理を示してきた。例えば、その例は、ニカラグア事件などにおける武力行使問題、ラグランド事件などの死刑執行手続・外交領事関連問題、核兵器の使用事件(勧告的意見)における核・安全保障の問題、イスラエルの壁建設事件(勧告的意見)における中東問題などに顕著に見られる。
 この研究において、以上の情勢・実行を分析することによって、当面は、以下のような暫定的な結論が導き出せると思われる。
(1)米国には、自国の国益を重視した独自の国際社会観に裏付けられた外交方針と、国内意思決定が行われてきた。
(2)この背景には、建国以来の歴史に根ざした連邦主義と三権分立の原則が非常に濃く反映されている。
(3)ただし、米国ほど国際法の分析検討を丹念に行っている国も少なく、国際法上、その法の支配に対する認識の深さと貢献の度合いは、過小評価されるべきではない。