表題番号:2006A-912 日付:2012/07/17
研究課題虚弱高齢者に対する筋力トレーニングが健康関連QOL及び日常生活活動に及ぼす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 助教授 岡 浩一朗
研究成果概要
本研究は、心身の機能低下が認められる高齢者の介護予防を目的として、マシンを使用した筋力向上トレーニングが身体諸機能および手段的ADLや健康関連QOLにどのような効果をもたらすかについて検討した。対象者は、老年症候群をスクリーニングするための介護予防健診(おたっしゃ21)を実施し、リスクが3つ以上(たとえば、虚弱、転倒、尿失禁)あると判定された65歳以上の高齢者46名で、参加者の大半が女性であった。3ヵ月間のトレーニングは、包括的高齢者運動トレーニングに基づいて、コンディショニング期、高負荷筋力増強トレーニング期、機能的トレーニング期と期分けして進められたが、対象者の状況に合わせて個別対応を重視した。測定項目は、身体的側面として移動能力(最大歩行速度、Timed Up & Goテスト)、柔軟性(長座位体前屈)、バランス能力(開眼片足立ち、閉眼片足立ち、ファンクショナルリーチ)、筋力(握力、膝伸展筋力)であった。一方、心理・行動的側面の測定には、手段的ADL(老研式活動能力指標)および健康関連QOL(SF-36日本語版)を用いた。トレーニングの結果、移動能力の指標である最大歩行速度およびTimed Up & Goテスト、筋力の指標である握力および膝伸展筋力に有意な変化が認められた。すなわち、上肢および下肢の筋力が強くなるとともに、移動能力にも向上がみられた。また、老研式活動能力指標およびSF-36日本語版の「役割機能-身体」、「役割機能-精神」においても有意な変化が認められた。すなわち、手段的ADLや日常的な役割機能についても改善することが分かった。また、トレーニング前のレベルが低い人ほどこれらの指標について大きな改善を示すことが明らかになった。以上のことから、虚弱高齢者にとってマシンを利用した筋力向上トレーニングの有用性が示されるとともに、トレーニング前の機能レベルを考慮する必要性があることが示唆された。