表題番号:2006A-859 日付:2007/02/21
研究課題ローカルな場の環境変遷を評価するシステムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
(研究目的)
 対象地域において地下に刻まれた環境汚染を時系列的に抽出し、それをベースにした環境予測システムを開発することを目的とする。①土壌サンプリング、②試料の調整法、③環境変遷解明に対する分析項目の決定および分析手法の選択、④結果の解釈、⑤将来予測ソフトの開発、から構築される研究プログラムである。
(研究成果概要)
 昭和40年代後半に大気汚染の激しかった千葉県中部の石油コンビナート後背地域をモデル地域として前述①②③④の検討を実施した。コンビナートの後背地域(東西約8km、南北約5km)の24地点(全て神社境内)から表層土壌計45試料を採取し、各サンプル中の重金属含有量をICP発光分析により測定した。各サンプル地点では地表に約20cmの穴を掘り、掘削断面の層相をベースに層区分を行い、各区分から試料を採取した。以下に成果の概要を列記する。
①採取試料の酸による前処理時間は4時間程度が最も溶解量が多かった。(前処理時間は4時間程度でよい)
②各地点の深度別試料では深度5cm前後で採取された試料中の重金属濃度が高い傾向を示した。(環境汚染をみるためには表層ではなく深度数cmの土壌試料を採取することが重要である)
③人為的起源の強い重金属は、V(バナジウム),Ni(ニッケル),Cd(カドミウム),Pb(鉛)であった。(これらは石油コンビナートから排出される煤塵分析結果と整合的である。即ち、これらの元素はこの種の地域の環境汚染分布を調べる指標となりうる。今後これらの元素をターゲットとする簡易分析手法を開発する)
④相対的に高濃度の汚染地点はランダムに分布しており、汚染源からの距離とは無関係である。(ため池底質試料より環境汚染史を解明する際のため池選定の判断資料となる)
(次年度以降の研究)
 今年度の成果をベースに人為的汚染履歴の解明へと進む予定である。