表題番号:2006A-814 日付:2007/03/30
研究課題フランス革命期における著作権法の形成の研究を中心とする、著作権法制の理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 助手 大橋 麻也
研究成果概要
 本研究課題の対象は著作権法であるが、研究手法の共通性から、不正競争法に関する派生的成果も挙げることができた。
 年度の前半は不正競争法の研究に費やした。著作権法の研究過程でフランス革命期の営業自由の確立について調べていたところ、不正競争法が形成される背景にあった自由企業制もそれと同根より生じたものであることに示唆を得て、この研究に着手した。内容は、フランスにおいて不正競争規制の法的手段が如何にして要請されたかという歴史的考察、および、現代法において不正競争の法概念が判例・学説上如何に認識されているかという実体法的考察である。この研究の成果は、次項に挙げるように、すでに小論にまとめられ公表されている。不正競争法については、今後研究活動の中心課題として調査をさらに進めていく考えである。
 年度の後半は、著作権法の研究に移行した。まず考察する問題の絞り込みを行い、結果として、革命期における著作権の承認が立法者にとって如何なる実際的意義を有していたのかを検討することとした。フランス革命期の立法は、自然権思想の下で著作権を所有権の名において規定したが、その事実により、革命立法は個人主義的近代著作権法の最たるものと認識されている。これに対し、私は、著作権の承認が革命期において何らかの目的に資する手段として機能したのではないか、という仮定に基づき、著作権法における自然権説を相対化することを念頭に研究を構想したものである。
 研究では、フランス革命以前、すなわち旧制度において著作物の利用を規律した特権が営業自由の思想により克服される過程を跡づけた後に、革命における著作権の承認に関して、産業秩序の維持をはじめとする公益的観点からの要請があったことを議会史料を通じて実証する、という手法で考察を行った。
 この研究の成果をまとめた論文は、社団法人著作権情報センター主催の懸賞論文として応募した。