表題番号:2006A-505 日付:2011/10/23
研究課題運動学習の脳内情報処理研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 正木 宏明
研究成果概要
2006年度では先ず,左右反応肢を交差させるスキル動作が脳内情報処理のどの段階で処理されるかについて,偏側性準備電位で検討した結果,運動プログラミング段階に由来することを示した.次に,運動学習は高精度の動作モニタリングと関係が深いことから,標的強度出力時の動作モニタリング機構を調べた.動作モニタリングは前帯状皮質が担うとする従来の報告に反し,力量発揮で生じる連続型エラーのモニタリングには一次運動野の関与が示唆された.さらに,動作モニタリングを反映するエラー関連電位は,課題困難度よりも反応エラー検出に鋭敏であることを示した(Psychophysiologyで報告).このように,標的強度出力課題はバリスティックな動作制御とその背景にある脳内反応関連処理を調べるうえで優れていることを確認した.
2007年度では,右手第2指で行う標的強度出力課題を反復練習した際,練習スケジュールの違いがスキル保持に与える影響を調べた.被験者は練習条件によって2群に分けられた.単一群では6N出力を反復し,多様群では3N,6N,9Nの強度値出力を交互に練習した.両群とも1ブロック60試行を5ブロック練習し,6N出力試行のみを分析した.実験終了後の直後テストと翌日の保持テストを実施した(各20試行).その結果,直後・保持テストとも,単一群のほうが多様群よりも絶対誤差は大きかった.次にスキル保持に及ぼす多様練習の効果が脳内情報処理のどこに起因するかについてCNVによって検討した.保持テストから多様群のスキル保持を確認した.CNVは練習期で前頭部優勢の前期成分が単一群で大きかった.保持テストではパフォーマンス同様CNVの群間差も消失した.本結果は,単なる反復練習は多様練習と学習の点で変わらないこと,多様練習には反応プログラミングとしての前頭葉機能が関与することを示している.