表題番号:2006A-501 日付:2008/03/24
研究課題光センサータンパク質を利用した光による生体情報制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 岡野 俊行
研究成果概要
多くの脊椎動物は、外界の光環境に応答するために多様な光センサーを発達させている。特に、哺乳類以外の脊椎動物では、脳や皮膚をはじめとして生体内の様々な部位が光感受性を持つ。本研究では、動物の光センサー分子の探索と光情報伝達経路の性状解析を行い、未知なる光情報制御機構を明らかにするとともに、光センサーを用いた生体情報の制御に向けた研究を行った。
 具体的にはまず、網膜および松果体に発現する分子として、新規光受容体候補分子であるクリプトクロム4(CRY4)および光情報伝達調節因子であるGRKについて、それらの遺伝子の単離・抗体作成・局在解析等を行った[1,2]。特にCRY4、これまでに知られている脊椎動物の光受容体(オプシン類)とは全く構造が異なり、植物や無脊椎動物にのみ知られている光受容分子ファミリーに属しており興味深い。また、鳥類の松果体には、ピノプシンやCRY4に加えて、メラノプシンが存在することも明らかにした[3]。鳥類の松果体は概日時計の中枢であることが知られているが、松果体や網膜以外にも卵巣にも独自の時計があり、組織特異的な機能に関与していることがわかった[4]。概日時計分子の機能解析としては、研究代表者らが以前発見した時計タンパク質であるBMAL2がPER2と結合して重要な働きをしていることをつきとめた[5]。これらの鳥類や魚類における解析と並行して、ヒトの皮膚由来の初代培養繊維芽細胞を用いた光応答性の解析も行い、光に応答する遺伝子MIC-1を発見した[6]。
 以上の解析を通して、可視光に対して、脳・網膜・皮膚が応答する際に働く、新規の光受容タンパク質と光情報処理に関連する因子を明らかにすることができた。今後は、たとえばCRY4が光情報を伝える因子の同定やCRY4やメラノプシンの機能解析等を進める予定である。そうして得られる知見と今回得られた知見を総合することによって、光シグナルを利用して遺伝子発現等を制御することが可能になると期待できる。