表題番号:2006A-109 日付:2007/05/21
研究課題介護予防マネジメントにおける地域高齢者ネットワークの活用とその展開モデルの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 中村 好男
研究成果概要
本研究では、平成17年度事業(厚生労働省老人保健健康増進等事業)で予備的にリクルートした地域高齢者のネットワークを活用して、(1)地域住民への「介護予防」の概念の普及・啓発、(2)地域での介護予防活動へ虚弱高齢者を集める仕組みの開発、(3)上記を達成するための地域リーダーの育成、を実施し、居住地区での介護予防活動の担い手となるために必要となる条件(阻害要素)を見出すことによって、一般市区町村での介護予防活動を効果的に推進するための地域介護予防推進活動のモデル作りを行うことを目的とした。
都内S区Y地区に居住する高齢者を対象として、「介護予防研修会」の案内チラシを配布し、参加者を募った。平成18年5月から同19年2月まで、毎月1回(計10回)の「研修会」を開催した。毎回の内容は、①介護予防に関する解説、②グループミーティング、③軽体操(ストレッチ、筋力強化運動等)、から構成されている。参加登録者は35名(平均年齢は72.4±9.5歳)であった。参加者の特徴としては、老人クラブや町内会といった地域に根付いた組織に参加している者が多かった。また、本事業のような介護予防に興味を示すのは女性が多かった。
グループミーティングの発言内容を分析したところ、当初は司会者の発言に対する受け身的な発言、あるいは、行政への依存を示す発言が多かったが、回を重ねるにつれて、自主的な問題提起や自立活動への意欲を表す発言が増えるようになった。また、「軽体操」に関しても、当初は、大学側で指導者(インストラクター)に対する要望が大きかったが、徐々に参加者の中から指導に興味を持つものが表れるようになり、最終回(2月)には、「自分たちは教わるのではなく広める立場」(2名)との自覚の芽生えを感じさせるコメントが得られた。
以上のことから、地域高齢者を動員する介護予防担い手ネットワークの賦活化に関しては、以下のことが結論づけられた。
a)提示した運動プログラムが良いものであれば広まるので、「運動を広める」という目標を達成するためには、運動プログラムの内容にこだわるべきである。
b)活動を広めるには『中身』に加えて『誰が広めるか』という問題を明確にする必要がある.今回は特に「どんなチャンネル」で広めるかということに重点を置き、高齢者クラブを使おうとした。地域ごとに様々な限界が想定されるが、適正な働きかけ方を行うことで良好なチャネルとして機能する可能性がある。