表題番号:2006A-069 日付:2007/11/19
研究課題オキソ架橋ルテニウム六核錯体の合成と性質
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 山口 正
研究成果概要
六核錯体,[{Ru3O(C2H5CO0)4(μ-phenato)2}2(m2-O)]PF6,の合成方の改良を行った。反応溶液の塩基性を挙げることにより若干の収率の向上が見られたが,さらなる塩基の添加は収率の低下を招いたため,最良でも1%の収率のとどまった(ただし,これは後述する異性体の分離を厳密に行ったため,非常に小さい収率となっている)。また異性体の分離についても行った。高分離能のシリカゲルカラムにより分離を行った結果,2種類の異性体が存在することが明らかになった。一つは予備的に結晶構造が分かっていた錯体であり,もう一方はこれと同一の配位子セットを有する異性体であることが明らかになった。X線結晶解析を行ったところ,両者とも4つのプロピオン酸イオンと2つのphenato配位子により架橋されたRu三核骨格がオキソイオンにより架橋された構造であったが,phenato配位子の架橋している位置が異なっていた。前者の異性体では4つのphenato配位子が対称的に配置しているのに対し,後者は非対称に配置している物であった。より高純度に得られた前者の異性体について,電子スペクトルの測定を行った。単離状態において混合原子価状態を取ることから,特徴的な原子価間遷移(IT吸収)が見られることが期待されたが強すぎる相互作用のためか,明確な吸収は確認できなかったが,近赤外領域に複雑な吸収を示した。
 また,類似の錯体として同様なphenato配位子が3つ架橋配位した三核錯体, [Ru3O(C2H5CO0)4(μ-phenato)(phen)2]PF6,の合成にも成功し,phenato配位子が同様な骨格では比較的安定に存在できることを示した。