表題番号:2006A-065 日付:2009/11/12
研究課題有用な生物活性天然物に含まれるビシクロ[3.3.1]炭素骨格の効率的不斉合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
Hyperforin は、抗うつ作用を示すとされている薬用植物St. John’s wort (Hypericum perforatum L.)より単離された、抗バクテリア活性、抗腫瘍活性等を示す化合物である。Hyperforinは特徴的なbicyclo[3.3.1]nonane骨格を有すること、また、この骨格を有する同族体が数多く報告されており、そのいずれもが有用な生物活性を示すことから、近年、多くの研究者により合成研究が行われている。我々は、これまでに報告されたbicyclo[3.3.1]nonane骨格の構築手法とはまったく異なるアプローチでbicyclo[3.3.1]nonane骨格の構築に成功した。我々は、光学活性なtricyclo[4.4.0.05,7]decene誘導体が触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応により構築できることを報告していることから、tricyclo[4.4.0.05,7]decene誘導体のbicyclo[3.3.1]nonane誘導体への変換を検討した。今回、tricyclo[4.4.0.05,7]decene誘導体をルイス酸により活性化すると、分子内に導入したベンジルカーボネートが分子内でtricyclo[4.4.0.05,7]decene誘導体のシクロプロパン部分と反応し、シクロプロパン環が位置選択的に開裂することによりbicyclo[3.3.1]nonane誘導体が93%の高収率で生成することを見出した。生成物はC9位に酸素官能基を有していることから、bicyclo[3.3.1]nonanone誘導体に変換可能であり、また、橋頭位へのプレニル基の導入が報告されていること、基質であるtricyclo[4.4.0.05,7]decene誘導体は光学活性体での構築が可能であることから、本手法はHyperforinの不斉全合成に展開可能であると期待される。
さらに、分子内シクロプロパン化反応により、メトキシ基をシクロプロパン環上に有するtricyclo[4.4.0.05,7]decene誘導体の構築にも成功し、それがブレンステッド酸、もしくはルイス酸により開環し、bicyclo[3.3.1]nonanone誘導体を容易に与えることを見出した。この手法はより効率的なbicyclo[3.3.1]nonanone誘導体構築法として期待されるので、今後、継続的に検討する。