表題番号:2006A-062 日付:2007/11/10
研究課題マウス体内時計遺伝子発現リズムの組織・器官特異的同調刺激の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
体内時計遺伝子は、中心時計の視交差上核のみに発現するのみならず、大脳皮質などの脳部位さらに、末梢臓器の肺や肝臓にも発現することが知られている。ところで視交差上核の主時計、大脳皮質の脳時計、末梢臓器の末梢時計が、同一の情報シグナルで同調されるのか、あるいは部位特異的な同調機構で同調されるのかを明らかにすることは、リズム不調の疾病やその薬物開発に重要な意味となる。主時計の視交差上核は外界の光刺激で同調されることは良く知られている。しかしながら、光照射を行っても直ちに大脳皮質や肝臓などの体内時計発振は同調されないことがわかった。すなわち、主時計以外の時計では、どのような生体シグナルが同調として働くか不明なままである。本研究から大脳皮質はメタンフェタミンやニコチンなどの覚醒刺激を起こす薬剤で同調されやすいことがわかった。実際、毎日一定時刻にメタンフェタミンを腹腔内投与したり、ニコチンを噴霧して与えた場合、大脳皮質や線条体の時計遺伝子発現リズムは同調され、腹腔内投与や噴霧投与の時刻依存的なピーク時刻が出現した。一方、末梢臓器に発現するリズムは大きく2つの因子で同調されることがわかった。すなわち、食事のシグナルとステロイドホルモンのシグナルでの同調である。食事時刻を変えると、視交差上核を破壊していても、肝臓や肺ではその時刻依存的リズムのピーク位相が出現した。また、肝臓や肺では、副腎皮質ステロイドホルモンを毎日1回噴霧投与すると、これでも同調されることがわかった。一方、大脳皮質ではステロイドホルモンでは同調されなかった。以上の実験成績をまとめると、大脳皮質の時計は覚醒刺激が同調因子となり、末梢臓器では食事やそれにともない変化する副腎皮質ステロイドホルモンが同調因子となることが判明した。