表題番号:2006A-056 日付:2008/05/23
研究課題超高真空トンネル顕微鏡を用いたシリコンなどの半導体表面修飾に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 伊藤 紘一
研究成果概要
シリコン単結晶表面を修飾してセンサーや非線形光学素子としての機能を付与するための研究の第一段階として、Si(100)2x1再構成
表面へのエチルアミンの吸着反応過程を走査トンネル顕微鏡(STM)観測と密度汎関数法による量子力学(DFT)計算により研究した。試料
表面への印加電位(Vs)を-1.5V(占有準位像)と+0.7V(非占有準位像)の場合について表面被覆率を変化させつつ室温でSTM像を観測し
た。その結果、安定な吸着状態に対応する2つのSTM像(以下、α、β像)と不安定状態状態に対応する像(以下γ像)の3種類のSTM像
によって、観測結果を説明し得ることが明らかになった。水分子などのSi(100)2x1再構成表面への解離吸着状態のSTM像などとの比較
から各STM像は、エチルアミンがシリコンダイマーに対してH-Si-Si-NH-CH2CH3結合を形成して解離吸着吸着した状態に対応し、特に、
α像は1つのダイマーに解離吸着した状態(OD状態)、β像は同一のシリコンダイマー列な隣り合ったダイマーに解離吸着した状態(IRD
状態)にあることが示唆された。この結果を確かめるために、シリコンクラスター、Si41H36およびSi53H44、に対してエチルアミンが
解離吸着したクラスターモデルについて、吸着エネルギーとLDOS近似にもとずくSTM像のシュミレーションを行った。上記の吸着モデ
ルに加えて、隣り合ったダイマー列間で解離吸着したモデル(ID状態)と分子状吸着したモデル(MA状態)を加えて計算を行った結果、
α、β像をシュミレーション結果はよく再現し、吸着エネルギーは、OD(235kJ/mol)>IRD(178kJ/mol)>MA(161kJ/mol)>ID(130kJ/mol)の
順に減少することが分かった。