表題番号:2006A-025 日付:2008/11/17
研究課題18世紀フランスの学校教育の社会文化史研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 森原 隆
研究成果概要
 18世紀フランスの学校教育の問題について、まずこれまでの研究の徹底した調査を行なった。とくに
フランスのアナール派の研究を中心に統計的、数量的分析に注目し、識字能力、プチト・エコル、コレ
ージュにかんするデータ集積に努め、学校教育に関する最新の知識や情報の獲得に努めた。京都大学、
金沢大学等で史料収集や研究調査・情報交換を行なった。とくに、それぞれの段階での教育が各社会層
にどの程度浸透していたかを、生徒や教員の出自・階層、通学・寄宿、無償・有償、などの諸側面を分
析することで通時的な動向を把握した。期間内の本研究では、この1760年代のフランスにおける教育環
境と教育思想を、最新の分析データにもとづいて、再構成し、この意義や実態を捉えるとともに、革命
期の教育議論への展望を試みた。
 研究成果として、研究論文「フランスのアンシャンレジーム期における教育」、浅野・佐久間編『教
育の社会史ーヨーロッパ中・近世』、知泉書館、2006年、245-269頁、を執筆した。今後の研究構想では
、この時期に論議される「国民教育」が真の「公教育」education publiqueであったかどうかが、重要
な論点になる。ここでとりあげられる「国民」とは大半が、いわゆる特権階層を中心とした教養エリー
トであり、必ずしも「民衆」peupleを含むものではないからである。さらにこの時代における「公教育」
と「私教育」の問題、さらに「公」public の理念の問題を明らかにし、またつねに個々の歴史的事実を
文化社会史観点によって検証しながら、今後の革命期にむけたさらなる研究につなげてゆきたい。