表題番号:2006A-009 日付:2007/03/13
研究課題1807年フランス商法典第2編の研究-海商法の実質的意義の解明に向けて-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 箱井 崇史
研究成果概要
 報告者は2007年度の単年度で本研究を実施した。この1807年フランス商法典(いわゆるナポレオン商法典)第2編「海商」については、1681年のルイ14世の海法(海事王令)の影響を色濃く残していることはよく知られているところである。本研究では、報告者が同じく特定課題研究助成費を受けて前年度に実施した「1681年海事王令」の研究(全文713箇条の試訳を完成させて「早稲田法学」に連載公表中)を受けて、両者の相互関係を細部にわたり明らかにしようとしたものである。
 研究の結果、1807年フランス商法典第2編「海商」は、商法典という位置づけを得ながらも、従来の海法の私法部分をまとめたものであり、他方で商法との体系的整合性はほとんど考慮されていないのではないか、また、フランス法を継受したドイツ法およびこれを経たわが国の商法典海商編の基本的理解についても再検討の余地があるとの仮説を得た。この点については、今後、論説の形でまとめて公表していきたい。
 また、従来、わが国で公表されてきている同海商編の翻訳に、海事王令の研究成果に照らして誤りと思われる箇所のあることも判明した。こちらも、商法典第2編の全訳(1807年原法文の邦訳は存在しない)を公表する予定であり、海商法の実質的意義の解明に向けてさらに研究を進めたいと考えている。
 なお、研究過程でトロント大学所蔵の貴重書をマイクロフィルムで入手するなど、これまで接していない各種資料を入手することができた。わが国ではほとんど行われていないこの領域の研究にとって有益な成果であったと考えている。残念であったのは、予定していたフランス出張を実施できず、当時の文献には触れられていながら存在が確認できない商法典編纂時の各地裁判所へのアンケート調査に関する資料を探すことができなかった。これはについては他日を期したい。