表題番号:2005B-409 日付:2006/10/12
研究課題古代エジプト土器の胎土分析並びにその評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 齋藤 正憲
研究成果概要
 エジプト、ヒエラコンポリス遺跡周辺で採取された粘土サンプルの化学組成分析ならびに蛍光X線分析を試みた。これらの粘土飼料はエジプト先王朝時代ナカダⅠ期に使用された粘土と推測されるものであるが、分析の結果、土器粘土としてはきわめて優れた粘土を使用していることが判明し、エジプトの土器生産が該期において専業化の第一歩を踏み出していたことが分かった。
 そのように評価された土器製作技術がつづくナカダⅡ期においてどのように変化したかんひついて、さらに検討を加えた。ナカダⅡ期前半にはシリア・パレスティナ方面からの技術流入が確認され、しかもそれは製作工程の全般に及ぶものであることから、陶工の移住を含めた技術交流が確認された。このことは、粘土の分析によりナカダⅠ期の土器製作技術が具体的に明らかにされたことで、より一層際だつものとして認識されたのである。
 ナカダⅡ期後半以降、エジプトは急激に社会の複雑化、さらには国家形成へと加速していく。そのような歴史的経緯を勘案したとき、先行するナカダⅡ期前半の土器製作技術の変化を見逃すべきではないであろう。陶工の移動を伴った可能性のある技術交流がエジプト社会を刺激し、国家形成へと向かわせたというシナリオを提起したい。