表題番号:2005B-406 日付:2006/03/26
研究課題2寞レベルの半整数ウエイト保型形式のフーリエ係数と保型L関数の中心値について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 坂田 裕
研究成果概要
本研究は、2寞レベルを持つ半整数ウエイト保型形式のフーリエ係数を保型L関数の中心値を用いて具体的に記述することを目的に
行ってきた.その手法は、(M.Ueda によって与えられた)2寞レベルを持つ半整数ウエイト保型形式と整数ウエイトの保型形式の
間にある(ヘッケ作用素の)トレース関係式と、志村-新谷対応の明示的性質を巧みに組み合わせながら、各ファクターを計算して
いくものである.その結果、レベル8の2次指標を持つ半整数ウエイト保型形式のフーリエ係数を保型L関数の中心値を用いて記述
することができた.また、レベル2^m(mは4以上の自然数)の半整数ウエイト保型形式の場合についても、それがある数論的条件
を満たすことを仮定した上で、そのフーリエ係数を保型L関数の中心値と(半整数ウエイトの保型形式に対応する)ヤコビ形式の内積
を用いて記述することができた(レベル2^m(mは4以上の自然数)の場合は、対応を記述する明示式がかなり複雑なものとなるた
め、N.Skoruppa-D.Zagier の与えたヤコビ形式のトレース関係式とヤコビ-モジュラー対応を用いて適切な明示を考えた).
 なお、これらの結果を得る過程において、半整数ウエイトの保型形式やヤコビ形式を一意に決める次の様な興味深い決定条件も得る
ことができた.
1.半整数ウエイトの保型形式を一意に決める条件.
有理数体上定義された楕円曲線に対応する半整数ウエイトの(ヘッケ固有な)保型形式のうち、その導手が3乗因子を持たない奇数で
あるものは、最初のフーリエ係数だけで完全に決定されてしまうというものである.これは楕円曲線に対応する保型L関数の中心値の
超越性(H.M.Stark によって発見された)を用いて証明することができ、楕円曲線に対応する保型形式が持つ著しい性質の1つとして
捉えることができよう.なお、この結果はその後、保型L関数の中心値等を用いてフーリエ係数を記述できる(上記の)2寞レベルを
持つ半整数ウエイト保型形式の場合においても成り立つことを示すことができた.
2.ヤコビ形式を一意に決める条件.
2寞レベルを持つ半整数ウエイト保型形式とヤコビ形式の間のトレース関係式を調べている過程において、ヤコビ形式を一意に決める
条件についても与えることができた(この様な条件はあまり知られておらず、今後様々な保型対応の性質解明に応用できる可能性があ
るといえよう).