表題番号:2005B-372 日付:2006/03/15
研究課題塑性変形進行を考慮した転がり接触面端部のトライボロジー特性評価手法
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 教授 松本 將
研究成果概要
1.研究目的
 歯車や転がり軸受の転がり接触面に於いて、材料の弾性限界を超えた接触圧力で使用する場合の設計手法を解明する。具体的には塑性変形量および弾性流体潤滑油膜厚さと初期接触圧力、繰返し数の関係を実験的に明らかにする。
2.使用した試験機
 光干渉式流体潤滑膜観察試験機を用いた。接触面に半透過膜(クロム)を蒸着した硬質ガラスと、直径6.35mmの鋼球(SUS)、黄銅球を純転がり、塑性域接触圧力条件で接触させ、ガラス背面から接触部の干渉縞を観察して、接触領域と油膜厚さを求めた。
3.試験結果
 下記のことが明らかとなった。
 1)転動繰返しによる塑性変形の進行に伴う接触圧力低下の傾向は、初期接触圧力、材料に依らずほぼ一定の傾向となった。
 2)塑性変形にともない潤滑油膜も厚くなる方向に改善されて行く。
 3)塑性変形の進行は、初期の材料硬度を基準とした弾性接触限界圧力でほぼ0.4(接触圧力/材料ブリネル硬さ)に漸近する。
 4)塑性変形の進行は、変形を考慮した接触圧力が材料の弾性接触限界になるまで継続する。すなわち、塑性変形が飽和する繰返し数は、初期接触圧力に依存する。
4.考察
 従来、数回で飽和(Shakedown)するといわれていた転動面の塑性変形進行は、形状が材料の弾性接触限界になるまで進行する。すなわち、塑性接触域での転動面の使用は、接触繰返しにともなう接触圧力低減線と、転動疲労発生限界線の交点が運転限界になる。
5.今後の課題
 転動面塑性変形は接触伴うせん断応力が最大になる転動体内部内部の加工硬化、材料硬度上昇を考慮する必要がある。運転繰返しによる加工硬化の状況を明らかにし、初期硬度基準による転動面塑性域接触面設計手法を取りまとめて行く。