表題番号:2005B-360 日付:2008/11/17
研究課題日本語の講義と講演の「談話型」に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院日本語教育研究科 教授 佐久間 まゆみ
研究成果概要
本研究は、日本語の講義と講演の全体的構造、すなわち、独話の「談話型」について、受講者の理解調査の結果から解明することを、主な目的としている。講義と講演は、いずれも、単独の表現主体(講義者・講演者)が一まとまりの知的な情報内容を一定時間(60~90分間)内に多数の理解主体(受講者・聴衆)に向けて発話するという、独話としての共通点と、それぞれの伝達目的に応じた固有の表現特性を併せ持っている。
今年度は、講義の談話に関する共同研究の分析結果を再検討し、講演の談話の本格的研究の準備段階として、資料収集と予備調査により、両者の「談話型」の異同を解明するための方法論的可能性と問題点を探ることにした。
大学の講義の談話分析と受講者の日本人大学生を対象とする理解調査(ノート・キーワード・要約文)の結果との関連性を考察し、以下のような日本語の独話の談話型の表現特性と理解の諸相を解明した。特定の受講者との相互作用が積極的な講義は、「対話」性がより強く、不特定の聴衆との双方向の交流の少ない講演は、「独話」性が顕著に認められた。これは、大学生対象の講演と一般向けの講演との違いにも、共通する傾向だといえよう。
1.講義の理解調査の残存認定の尺度として、10種の「情報伝達単位(CU)」を用いて、原話・ノート・要約文を分析し、受講者の理解に基づく講義の談話型を解明したが、講演も、CUを適用した分析が有効かつ不可欠であることが確認された。
2.2種の講義の受講者2集団約160名によるノートと要約文の調査結果から、講義の表現特性を分析したが、講演の場合は、聴衆の理解過程の調査が困難なことから、講演の録画資料による理解調査を後日実施する必要があるが、具体的手順の検討を要する。
3.講義の「話段」の多重構造に基づく「談話型」の基本は、講演にも共通している。