表題番号:2005B-354 日付:2006/03/25
研究課題レーザCTを用いた3次元音空間の直接観測とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院国際情報通信研究科 教授 山崎 芳男
研究成果概要
コミュニケーションの重要な担い手である音は空気の気圧変動である。音の伝播過程を知ることは快適なコミュニケーション環境の確立,静かな空間の実現にとって重要である。しかるに空間の音波の振る舞いを直接観察する方法は現存しない。わずかに音響管の中の一次元音場などをコルクや松やになどの軽い粒子を使って可視化するクントの実験が知られている程度である。クントの実験も直接空気の振動を観測するものではなく軽い粒子の動きとして定在波を観察するものである。本研究では光が空気中を進む際,その速度が密度により変化する現象を利用した提案者らが発見した新しい空気振動の観察方法を利用して,レーザドップラ振動計とコンピュータ断層撮影法(CT)を用いた3次元音空間の直接観察方法を確立し,研究期間内にこれを利用した学校の教室,講堂,コンサートホール,劇場などの音響設計手法を確立する。
 一般にレーザドップラ振動計は物体の振動の測定に用いるが,振動しない剛壁にレーザを照射すると空気の圧力変化により光路長の変化として測定することができる。レーザを走査することにより一測定点から複数の光路の音圧を測定し,さらに医療分野で使われているCTを利用することにより,3次元空間の空気の振る舞いである音波を直接観測することができる。
 具体的成果としてはレーザドップラ振動計を用いた音場の可視化、レーザCTを用いた音場の断層撮影法を用い音場の測定を行った。各種スピーカから再生される音場の測定、波面の様子の比較、また、反射板や音響レンズ、スピーカアレーにより生成される音場の可視化、音響設計への適用の可能性を検証した。これまでの周波数領域での処理に加え、時間領域での測定を可能にし、ある時間内での波面の可視化を行った。このことにより直接音のみならず反射音の様子を詳細に観測することが可能となり、インパルス応答の測定も可能となった。さらに、比較的簡易に移動できる測定系を構築し、室内音場の可視化、観測を行い、建築音響設計への応用を試み、その有用性を示した。