表題番号:2005B-319 日付:2008/06/05
研究課題クラブ組織のコーチングシステムに関する日・中比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 助教授 礒 繁雄
研究成果概要
今回の研究対象は,中国の陸上競技種目における大学スポーツ事情とグラブスポーツとの関係に関して調査した.調査対象は中国における代表的な地域として「上海」地区を選び,華東師範大学と上海運動技術学院(クラブスポーツ的)において現地調査を行なった.
主な結果は以下の通りである.
1.上海のトップアスリート育成は,劉選手を代表とするクラブ的組織である上海運動技術学院を頂点とした組織構成であった.この組織は,17歳以上の競技者を対象としておりランク制度があるものの,衣食住はすべてクラブ側負担であり生活補助費が前年度成果を中心とし,さらに代表者(校長)の評価を加味して決定している.
2.上海運動技術学院に所属している選手は,希望の大学に所属することが可能である.さらに,大学側はクラブでトレーニング活動を学業の一部として認めている.その背景には,クラブコーチが大学の教員的位置にあることが関係しているようである。この点は,日本の教育状況と違うため再度検証が必要である.
3.中学・高校の教育カリキュラムには,スポーツ・芸術等の特性のある生徒を対象に業余学校として受け入れるシステムである.業余学校は,基本的に午前にカリキュラムされた科目の学習があり,午後はそれぞれの専門のスポーツをトレーニングする内容である.学校には,体育の教員とコーチを専門とする教員が存在していた.
4.上海スポーツの構造的頂点は,上海体育協会である.この組織は,日本の組織として考えると,教育と身体運動に関わる社会事業を運営または経営している.具体的には,クラブや大学までのスポーツに関わる政策を立案し,さらに身体運動に関係する全ての事業,例えば食品店舗・ホテル・マンション売買等生活に必要な事業を展開している.

 華東師範大学陸上競技担当教員の陸教授からは,日本の大学スポーツ制度に関して質問を受けできる範囲で回答した.陸教授は,北京オリンピック以降の中国スポーツが大きく変化するであろう,それは,日本的な大学独自のスポーツ育成強化に移行するのではないかとの予測であった.この点は,これから特に注目する内容と思われる.