表題番号:2005B-318 日付:2006/03/24
研究課題分泌型免疫グロブリンAの産生に対する加齢と運動の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 助教授 赤間 高雄
研究成果概要
【目的】加齢に伴う免疫機能低下は運動習慣によってある程度抑制できる可能性がある。唾液中の分泌型免疫グロブリンA(SIgA)を指標として加齢による免疫機能低下に対する運動の効果をヒト(実験1)とラット(実験2)で検討した。【方法】(実験1)後期高齢者32名(78.8±3.1歳)と前期高齢者14名(70.9±2.8歳)の唾液SIgA測定とライフコーダーによる身体活動量測定を行った。(実験2)6ヶ月齢の雄性 SD 系ラット5 匹を飼育して10 ヶ月齢時から1ヶ月ごとに唾液を採取した。コントロールとして8週齢のラット 7 匹の唾液も採取し、SIgA 濃度を ELISAで測定した。【結果】(実験1)後期高齢者ではSIgA分泌速度が39.1±26.3μg/min、身体活動量が100.2±92.8kcal/day、前期高齢者ではSIgA分泌速度が33.6±15.2μg/min、身体活動量が141.2±67.8kcal/dayであった。前年の測定とあわせて対象数を増やして解析すると、前期高齢者ではSIgA分泌速度と身体活動量に正の相関があった。(実験2)10~12ヶ月齢ラットの唾液SIgA濃度は、4.4±2.0(10ヶ月齢)、5.6±1.9(11ヶ月齢)、5.3±2.9(12ヶ月齢)μg/mlで、有意な変動はなかった。8週齢ラットの唾液SIgA濃度は6.6±1.6μg/mlで、10~12ヶ月齢ラットと有意な差はなかった。【考察】ヒトでは、身体活動量が多いとSIgA分泌速度が高い傾向が考えられるが、さらに対象数を増やして検討する必要がある。ラットでは、10~12ヶ月齢では明らかなSIgAの低下は認めなかったが、さらに高齢となる18ヶ月以降に SIgA 濃度の測定、およびSIgA の分泌過程で働く唾液腺内のpolymeric immunoglobulin receptorのmRNA発現を測定し、運動トレーニングの効果も検討する予定で飼育を継続している。