表題番号:2005B-312 日付:2008/10/29
研究課題手足の動作協調に関わる神経機構の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 彼末 一之
(連携研究者) 先端科学・健康医療融合研究機構 助手 村岡 哲郎
研究成果概要
協調運動とは、多関節または多肢を時間的・空間的にある目的に従って制御することを要求される運動である.拍手や歩行、ドラム演奏など、我々の周囲には協調運動が多様に存在し、運動の難易度もまた様々である.本研究では、手関節および足関節の屈曲・伸展という単純な運動に着目し、パフォーマンスを定量化することで運動の難易度を序列化することを試みた. 【方法】 被験者は健常な男性4名、女性4名の計8名である.台上に仰臥位になり、手関節・足関節の屈曲・伸展運動を、5段階のメトロノーム音 (1, 1.6, 2, 2.5, 3.3 Hz) に合わせて行った.関節回転角度はポテンショメータで計測した.タスクは6種類の二肢の組み合わせパターン (両手、両足、左手足、右手足、左手右足、右手左足) に対し、2種類の方向関連性パターン (in-phase:同位相/anti-phase:逆位相) を掛け合わせた12種類を用意した.同位相 (in-phase) とは、二肢を同時に同方向に動かすことを意味し、逆位相 (anti-phase) は同時に逆方向に動かすことを意味する.各タスクは10秒間維持され、またランダムな順番で行われた.ポテンショメータから得られた二肢の動きの変位を相互相関することで、パフォーマンスの評価の指標とした. 【結果】 タスクの種類によってパフォーマンスに難易差が現れた.1)homologous limbs (両手、両足) は、inhomologous limbs (手と足の組み合わせ) よりパフォーマンスを維持しやすい.2)同位相において、ipsilateral hand-foot (同側の手足の組み合わせ) とcontralateral hand-foot (対側の手足の組み合わせ) は、同じ位パフォーマンスを維持できる.3)逆位相において、同側の手足の組み合わせの方が、対側の手足の組み合わせよりパフォーマンスが困難である. 【結論】 同位相の運動より逆位相の運動の方でパフォーマンスが低いという結果から、運動の“方向性”がヒトのパフォーマンスに強く影響を与えることが考えられる.またそれは両手、両足といった相同性器官の組み合わせにおける運動よりも、手と足、特に同側の手と足を組み合わせた運動において顕著となって現われた.