表題番号:2005B-289 日付:2008/03/16
研究課題香りと色の調和がもたらす心理的・生理的効果と感性データベースの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 齋藤 美穂
研究成果概要
色彩と香りのマッチングに着目し、両者を様々に組み合わせ、相互作用に伴う人への効果や影響に関して、心理的・生理的両指標を用いて検討した。
心理的効果の指標として、SD法による5段階印象評定、気分評定(4段階)の2つを用いた。生理的指標は、脳波の一種である随伴性陰性変動(CNV)、心電図(ECG)、唾液中クロモグラニンA(CgA)の3指標であった。
まず、色と香りの調和ペア、不調和ペアを抽出する実験を行なった。15種の香りと18色を刺激とし、100名の対象者(20.6歳)に、各香りに対してふさわしいと思われる色、各色彩に対してふさわしいと思われる香りの選択を課した。その結果、ピーチ/バニラ/スペアミント/セダーウッドの4種の香り×ペールピンク/ビビッドブルー/オリーブの3色、計12種を抽出した。
次に、組み合わせによる効果を検討した。視野全体が覆われたカラーパーティション内で香りを嗅がせるという手続きによって行なった。
心理的指標による実験では、71名の対象者(20.7歳)に対し、12種の刺激に対する印象評定、気分評定を課した。その結果、調和ペアでは印象、気分共に本来の特徴がより強化される傾向が得られたのに対し、不調和ペアでは、印象は相殺され、気分を不快にさせる傾向が示された。
生理的効果に関して、CNV計測(20名;23~33歳)の結果、調和ペアでは沈静方向、不調和ペアでは覚醒方向への変化が観察された。心電図測定(16名;23~29歳)によっては、調和ペアでは心臓副交感神経活性を示すHF値は上昇したのに対し、不調和ペアでは低下を示した。このことより、不調和な組み合わせではストレスを感じていたと考えられる。さらに、CgA測定(11名;23~29歳)の結果から、調和条件より、不調和条件下の方が、CgA濃度が高く、精神的ストレスが与えられたことが示唆された。
以上を考え合わせると、香りと色の調和ペアではそれぞれの印象や効果を相乗的に高め合うのに対し、不調和ペアでは各々の特徴が相殺されて不安定化し、心理的不安が生じると考えられる。