表題番号:2005B-283 日付:2006/04/01
研究課題アルコール嗜好性と肝臓内エタノール代謝及び血漿エタノールクリアランスとの関連
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 今泉 和彦
(連携研究者) 上越教育大学大学院 教授 立屋敷かおる
研究成果概要
[目的]飲酒(=エタノール摂取)によって生体内に取り込まれたアルコールは、胃および小腸から門脈を
介して肝臓に輸送される。この肝臓内でアルコールはAlcohol dehydrogenase (ADH), Microsomal ethanol
oxidizing system (MEOS) および Catalase によって酸化・分解されることが知られている。この三種類の
酵素のうち、総アルコール量の約80%がADHにより、約15-20%はMEOSにより、約2%がCatalase によって触
媒されることは多くの報告で明らかにされている。一方、肝臓内でアルコールの酸化・分解に主要な役割を
担っているADH の活性は、エタノールの嗜好性の程度と関係することが私達の結果で明確にされている。即
ちエタノール嗜好性が高いC57BL/6Jマウス肝臓内cytosol内ADHの活性はエタノール嗜好性の低いDBA/2Jマ
ウスのそれに比べて有意に高かった。本研究ではエタノール嗜好性が高いほどエタノールクリアランスが高
いか否かを明確にするため、エタノール嗜好性が高いC57BL/6Jマウスと低いDBA/2Jマウスの肝臓内cytosol
内ADHの活性及びエタノールクリヤランスについてしらべた。[方法]C57BL/6J雄性マウスとDBA/2J雄性マ
ウス(いずれも8週齢)に1g/kg体重のエタノールを経口投与し、経時的に採血して血漿を得た。各群の血
漿中のエタノール濃度をガスクロマトグラフ装置で測定した。エタノールクリヤランスの指標は、血漿エタ
ノール濃度を時間に対してプロットした全面積の逆数(=∑値)とした。血漿からエタノールが消失する3
時間後に常法により全てのマウスの肝臓内cytosol画分を超遠心法にて調製した。それらの画分中のADH活性
を分光学的に測定・解析した。[結果と考察]∑値はC57BL/6JマウスがDBA/2Jマウスより1.4倍有意に高か
った。この結果はエタノール嗜好性の高いマウスの方がエタノール嗜好性の低いマウスよるエタノールの消
失速度が高いことを強く示唆している。また、肝臓内ADH活性はC57BL/6JマウスがDBA/2Jマウスより1.6倍
有意に高く、エタノール嗜好性が高いマウスの方がエタノール嗜好性が低いマウスより肝臓内でのエタノー
ル分解能が明らかに高いことを示唆している。[まとめ]エタノール嗜好性の程度は肝臓内ADH活性や血漿
内エタノール消失速度の程度と密接に関連する。