表題番号:2005B-282 日付:2006/04/01
研究課題タンパク質合成ステロイドおよびβ2アゴニストによる骨格筋肥大効果と体質改善効果
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 今泉 和彦
(連携研究者) 上越教育大学大学院 教授 立屋敷かおる
(連携研究者) 人間科学部 助手 一之瀬 貴
研究成果概要
【目的】タンパク質合成アンドロジェニックステロイドおよびβ2アゴニストの一つであるクレンブテ
ロール (Clenbuterol:CLE) による骨格筋タンパク質量の増加作用とそのメカニズムを明確にするため、
CLEをラットに投与した際の5種類の骨格筋の重量とタンパク質量、血漿内エネルギー基質(グルコー
ス、トリグリセリド、総コレステロール)、インスリン、サイクリックAMPの各濃度、および血漿容量
比(=全血液量に対する血漿量の比率)が如何に変動するかを検討した。
【方法】8週齢Sprague Dawley系雄性ラットに0.05~1.0mg/kg体重/dayのCLE量を頸背部皮下より投与
し、ヒラメ筋(SOL), ヒフク筋(GAS), 足底筋(PLA), 前脛骨筋(TIB), 長指伸筋(EDL)の各重量とタンパ
ク質量を測定した。また、1.0mg/kg体重のCLE量をラットに投与した際の血漿内エネルギー基質、イン
スリン、サイクリックAMPの各濃度および血漿容量比などを経時的に測定・解析した。
【結果と考察】①CLEをラットに投与すると、GAS, PLA, TIB, EDLなどの速筋の重量やタンパク質量は
投与日数と投与量にほぼ比例して有意に増加したが、遅筋のSOLでは有意な変化がみられず、筋タイプ
によってその効果が異なっていた。②1.0mg/kg体重のCLE量をラットに投与して1時間後の血漿グルコ
ース濃度は投与前の2.2倍、トリグリセリド濃度は1.9倍に増加し、この増加作用はdose-dependent で
あった。③血漿中の総コレステロール濃度もCLE投与で時間の経過と共に増加し、劇的な変動が観察さ
れた。④CLE投与によって血漿内インスリン濃度は有意に増加したが、血漿サイクリックAMP濃度は変
動がみられなかった。⑤血漿容量比はCLE投与後著しく上昇し、細胞外腋量の増加が明らかに認められ
た。この結果より、CLE投与によって血漿内水分が見かけ上多くなり、例えばドーピング薬物が生体内
に存在していた場合にはその薬物が希釈されてマスキング作用を持つ可能性があることを示唆する。
【結論】CLE投与はラットの4種類の速筋重量とタンパク質量を投与の量と日数にほぼ依存して増加さ
せ、血漿エネルギー基質とインスリンの各濃度および血漿容量比を有意に増加させる。