表題番号:2005B-275 日付:2006/03/24
研究課題18世紀イギリス都市における市民的社交圏の形成-地域社会、消費文化、貧困-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 中野 忠
研究成果概要
本研究は18世紀イギリスの都市史、社会経済史にかんするより広範な共同研究の準備を整えるためのものである。この共同研究の出発点となったのは、早稲田大学を拠点に全国7大学の若手研究者を中心に行っている「長期18世紀社会経済史研究会」である。「市民社会」の形成期でもあるイギリスの18世紀は、わが国の社会経済史では、産業革命とその準備段階の時代として研究されてきた。しかし近年、産業革命そのものの見方に大きな修正が加えられてきたことに加えて、18世紀の社会と経済を、より長期的で多面的な角度から見直す動きが盛んになっている。研究テーマは、貧困と慈善、移動とアイデンティティ、消費文化と都市エリート、地域社会のガヴァナンスと国家形成、帝国とエスニシティ、公共性と市場、ジェンダー、家族と子どもなど、一人の研究者では捉えきれないほどの広がりを見せている。共同研究では参加者それぞれの専門的な立場から新しい研究成果を吸収しつつ、市民的社交圏という概念を手がかりに、18世紀のイギリス社会像を再構築する試みを続けている。本年度は次のような活動を進めた。
(1)研究会: 2005年度は、7月、12月、3月の3回、早稲田大学で開催し、研究報告とディスカッションを行った。報告テーマには次のようなものがある。「近世イングラント地域社会のガヴァナンス」「18世紀イギリス地方都市のフリーメン」「イギリスの実業教育振興活動に関する史的考察」「18世紀における北太平洋毛皮事業と英露貿易」「近代イギリスにおける都市市場の展開と変質」など。これらの報告は専門誌、各大学の紀要などに発表された(もしくは刊行予定)。
(2)合宿: 9月下旬、箱根にて1泊2日の研究合宿を行い、参加者の報告をもとに科研費へ共同研究の申請を行うための全体プランの準備と調整を行った。また共同研究の作業の一貫として、18世紀に関するデータベースを構築することが合意された。
(3)データベース:その最初の試みとして、ロンドンとキングス・リンのフリーメン登録簿の入力をほぼ完了した。また1793-1798年の商工人人名録(全9巻)を本研究費で購入し、その入力の準備も開始した。