表題番号:2005B-272 日付:2006/03/24
研究課題生物多様性保全の経済分析:目的関数・不確実性・割引
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 赤尾 健一
研究成果概要
生物多様性に関して、Nehring and Puppe (2002) の多様性関数に対する属性アプローチについて詳細に検討した。生態学の多様度の概念とどのように結び付けるべきかを考察したが、未だ結果は出ていない。
ナイト流の不確実性に関して、基礎となるGilboa and Schmeidler (1989) の理論およびその連続時間モデルへの拡張であるChen and Epstein(2002)、その環境問題への応用であるAsano (2005)等の論文を研究した。幾何ブラウン運動を元にして、特定のdesnsity generatorと制約条件(kappa-ignorance)のもとで「予想」の集合をつくると、ナイト流不確実性下での最適制御は、ドリフト項のみを修正した幾何ブラウン運動の確率最適制御問題に帰着する。この手法は非常にトラクタブルである。しかし、極めて制約的でもある。より一般的な結果を得るにはどうすればよいかを考察したが、未だ結論は出ていない。なお、Giboa-Schmeidlerの有限集合モデルでの公理系をChen-Epsteinが連続時間の動学的世界に拡張する際に微妙な問題があるように感じた。
以上、本研究では、生物多様性の経済分析として、これら二つのトピックスを研究したが、形式的に両者は確率キャパシティを通じて関係しあっている。今後、有限確率の枠組みの中でそのつながりを明らかにしたい。また連続時間への拡張であるChen-Epsteinは非常に難解な論文である。超準解析によって見通しのよい拡張と応用ができないか、今後研究していきたい。