表題番号:2005B-255 日付:2006/03/22
研究課題宇宙線中の超鉄核同位体検出器と解析システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 長谷部 信行
研究成果概要
CR-39にDAP樹脂を重合した共重合体樹脂はその重合割合により検出できるZ/β閾値が可変であるか、また可変であればどの重合割合が超鉄核観測に最適であるかについて検討を行った。DAPの重合割合を11種類(0%~100%)まで変えた樹脂に、放医研のHIMAC重イオン加速器から500MeV/n以下のエネルギーの酸素核からキセノン核までの重イオンを照射し、化学エッチング処理は7N NaOH溶液を用いて70℃と90℃の2種類の温度で1~18時間行った。その結果、DAPの重合割合が高くなるほど系統的に重イオンに対する応答関係は変化し、重合割合により検出できるZ/β閾値が可変であることが分かった。また、我々の要求するZ/β>30に検出閾値を持つものとして、DAPの重合割合が約50%の共重合体樹脂であることが分かった。
CR-39は高い質量分解能を有しており低Z/β粒子に対して高感度であるが、放射線照射時の温度や真空度に対する感度応答の依存性が大きく、必ずしも暴露環境が厳しい宇宙空間における宇宙線観測に適しているとは一概には言えない。一方、1988年に開発されたバリウムリン酸塩ガラス(BP-1)はその飛跡生成機構がCR-39と異なる為、温度依存性が少なく真空状態においても応答する。しかし検出できるZ/β閾値が50以上であり低Z/β粒子に対する感度応答はCR-39に比べて悪い。更に、BP-1における超鉄核に対する質量分解能は、現状では隣り合う同位体を弁別するには至っていない。そこで本研究において、宇宙環境に強いというBP-1の利点を生かし、ガラス組成の最適化を行いZ/β閾値を30程度までに引き下げ尚且つ質量分解能がZ=30で0.20amu程度を持つような高性能BP-1ガラス固体飛跡検出器の開発をオハラ(株)と協力し取り組み始めた。BP-1は日本では製造されていない全く新しい素材である為、まずオリジナルの組成を持ったBP-1を製造できることが目標となるが、オリジナルとほぼ同一の組成をもつBP-1の製造に成功した。