表題番号:2005B-204 日付:2006/03/29
研究課題健康を維持・増進する空間のあり方を研究対象とする建築健康学に関する共同研究の企画
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 渡辺 仁史
研究成果概要
従来の建築計画では、混雑を緩和するなどの効率性や、利用者が美しいと感じるような芸術性が空間を評価する軸であった。しかし高齢社会を迎え、空間を評価するものとして、新たに「健康」という軸が必要であると考える。

我々の考える「建築健康学」とは、「健康を維持・増進する空間計画」の事で、肉体的な側面と精神的な側面がある。本年度は「精神的な健康を維持・増進する空間計画」をテーマに、以下の二つの研究を行った。

・テレワーク時における他者の情報伝達による精神的健康の変化

IT技術の進歩などの背景を受け、再度テレワーク環境に注目が集まっている。しかし、他者と離れた環境において個人で仕事を行う弊害として、コミュニケーションの不足や不安感などの問題があり、精神的な健康を蝕むことが想定される。

そこで本研究では、在宅勤務の環境で欠落しやすい他者の行動情報を、相互に伝達するシステムを開発しその効果を検証した。具体的システムは、在宅勤務の空間上の制約により欠落している「同僚の気配や行動の様子」といった情報を、PC作業空間において、「音」で2者間に相互に伝えるものである。その結果、本システムを利用した方が、精神的ストレスを感じずに仕事を行えることが明らかになった。

・共同生活における生活情報伝達による精神的健康の変化

昨今、ルームシェアリングなど、共同生活に対する関心が高まっている。しかし、共同生活になじめずに、その利点を生かせず精神的健康の弊害を生む事例が報告されている。

そこで本研究では、「居間における同居者の気配」を、自室にいる入居者に、人工的な「音」を用いて間接的に伝えるシステムを開発しその効果を検証した。その結果、居間の情報が全く伝わってこない自室において、「音」により居間の情報を伝えることで、積極的に居間へ足を運ぶようになった。本システムは、精神的ストレスを軽減し、入居者にとって生活のしやすさをサポートすることが明らかになった。