表題番号:2005B-203 日付:2006/03/20
研究課題リスクコストに着目した道路橋床板の性能照査型設計手法の提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 依田 照彦
研究成果概要
近年,新技術導入や重交通路線の増加などから,合成床版やPC床版などの高機能床版の採用が増える中,従来重要視されてきた一般の供用状態における耐荷力の評価のみでなく,耐久性の低下や災害等によるリスクを考慮した破壊損失に対する性能の表現が求められている.しかしながら,破壊に対する損失コスト(以下,リスクコストと称す)の算出には,性能関数や破壊確率の設定,損失が発生した場合の社会的影響,経済的価値変動などの様々な不確定要因が関係し,リスク評価を実用的な設計において導入することは容易ではない.
 そこで,本研究では,実用的な設計の場において適切な道路橋床版の管理手法を検討する手段として,RC床版の疲労損傷リスクによるリスクコストを考慮したライフサイクルコストの算出方法について検討した.
 供用期間中に発生する可能性のある事象に起因する潜在的コストをリスクコストとして考慮したライフサイクルコストは式(1)のように定義される.ここで,CI,CM,CR,CFはそれぞれ初期建設コスト,維持管理コスト,更新廃棄コスト,リスクコストである.リスクコストCFはハザード(ここでは疲労損傷による耐荷力の低下)が発生した場合の所定の被害に伴う損失復旧額Cf(ここでは床版打ち換え)とハザードが発生する確率pf(t)の積であり,式(2)のように表される.
      LCC=CI+CM+CR+CF    (1),   CF=pf(t)×Cf    (2)
 破壊確率pf(t)は時間の関数であるが,維持管理の実施によりその値は減少し,潜在的なリスクコストCFを大幅に低減することができる.しかしながら,その場合,点検や補修に要する顕在化した維持管理コストCMが増大する.すなわち,維持管理に要するコストとリスクを保有することによるコストの最小和を求めることが,ライフサイクルコストを最小にする維持管理手法を決定することになる.