表題番号:2005B-200 日付:2006/10/26
研究課題未利用資源鉱物を利用した高機能性環境浄化素材の創出研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山崎 淳司
研究成果概要
 水質汚濁防止法に基づく排水基準のうち、「ホウ素、フッ素、アンモニア及び硝酸・亜硝酸化合物」に関しては、今月の平成16年6月30日に暫定排水基準の適用期限が来るにもかかわらず、40業種中26業種については一律排水基準達成が困難なことから平成19年6月30日まで強化された暫定基準による適用延長措置がとられることになった。この措置は、イオン交換樹脂等によりコストをかければ達成できるものの、26業種では経営上の負担に耐え得るような経済的な処理技術が事実上無いことが主な理由と考えられる。これら主に陰イオンに対してはハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物(LDH)などの陰イオン交換性物質が有望視されている。しかし、市販の高結晶性ハイドロタルサイトは、炭酸イオン・硫酸イオンに対して極めて高いイオン選択性があり、目的有害陰イオンの吸着・固定能が得られず、また高価(約1000円/kg)なために実用にほとんど供されていない。そこで本研究では、陰イオン選択性を制御して、ホウ素、フッ素、亜硝酸化合物などの規制対象陰イオンに対する十分な吸着・固定能を有する「ハイドロタルサイト様物質」を最適化するのと同時に、未利用または廃棄物として存在するマグネシウムおよびアルミニウム資源物質を原料として、ハイドロタルサイト様物質」を安価、安定かつ大量に生産しうる製造プロセス(システム)を構築することを目的とした。
 様々な出発原料から炭酸型、硫酸型、塩素型のハイドロタルサイト様物質を調製して、結晶粒子径が溶液中の共存イオンの吸着挙動に与える影響を調べた結果、炭酸型ハイドロタルサイトと塩素型ハイドロタルサイトで塩素、ホウ素、ヒ素及びフッ素イオンを硫酸イオン共存溶液条件下で吸着実験を行うと、塩素型で高い吸着能力を示すことがわかった。高結晶性の塩素型ハイドロタルサイトではフッ素を、低結晶性の塩素型ハイドロタルサイトではホウ素及びヒ素を、また高結晶性と低結晶性の両方の塩素型ハイドロタルサイトで硫酸イオンに対して高い吸着性を示すことがわかった。さらに、塩素イオンに対して塩素型ハイドロタルサイトは吸着を行わず、炭酸型ハイドロタルサイトで少量吸着する挙動が認められた。