表題番号:2005B-195 日付:2006/08/24
研究課題逐次周辺尤度オンライン変化検出:粒子フィルタ的接近
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松本 隆
研究成果概要
工学における「変化検出」(change detection) は、興味の対象としている広い意味のシステム内部の突発的変化の検出を意味するのが一般的である。“突発的変化”は瞬時的あるいはデータ収集速度より遥かに速い変化を意味する。従ってこれはいわゆる適応推定 (adaptive estimation) とは異なる範疇の問題である。適応推定ではシステムのパラメータが緩やかに変化する場合である。変化が突発的であることは変化量が大きい事を意味しない。むしろ逆に変化量が小さい場合がチャレンジングである。工学で扱う問題ではデータに不確定性 (雑音である事が多い) が含まれているのが普通なのでそのような枠組みで問題を捉える必要がある。
 優れた変化検出アルゴリズムは広大な応用を持つ。広い意味のシステムにおける故障検出、不正検出、動画像における場面変化検出、話者変化検出、医用データ変化検出、製品品質変化検出、環境データ変化検出、天候変化検出、地理データ変化検出、等々である。
 変化検出アルゴリズムは大きく分けて二つのクラスに分けることができる。ひとつはモデル準拠型、そしてもうひとつはデータ準拠型である。前者では対象としているシステムを既述する方程式が分かっている場合、後者はそれが分からない、あるいは原理としては方程式導出が可能なはずであっても現実には極めて困難な場合であって、得られたたデータのみから変化を検出しようとする手法である。
この研究はデータ準拠手法の一つであり、Bayes的オンライン学習の枠組みから興味のある変数、例えば「逐次周辺尤度」、隠れ変数としての「変化変数」など、の逐次事後分布公式を導き、実装を「逐次モンテカルロ(Sequential Monte Carlo)」手法(粒子フィルタ、Particle Filterとも呼ばれる)で遂行している。すでに幾つかの成果を生んでおり、国際雑誌、国際会議、などで採録されている。