表題番号:2005B-193 日付:2006/03/25
研究課題ペンタシル型ゼオライト膜の合理的製膜手法とメンブレンリアクターの開発に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松方 正彦
研究成果概要
膜分離は省エネルギー技術であり、新規な分離膜、および分離膜と反応器を組み合わせた反応分離場の創生は、エネルギー・環境問題の解決に寄与することが期待できる。本研究では、分子と同程度のミクロ細孔をもつ無機材料であるゼオライトを薄膜化することによって、分子レベルの分離が可能で耐熱性、耐酸性に富む新しい分離膜を開発し、さらにゼオライト膜と固体触媒反応器を用いた新規な反応分離を実現することを目的とした。
モルデナイト膜、ZSM-5膜の二種のゼオライト膜について、その生成過程を検討し、結晶の育成条件と生成する構造の相関を明らかにし、膜の緻密化を合理的に進めるための指針を得た。また、得られた緻密なゼオライト薄膜について、高温(150-300℃)、高圧下(0.-3.0 MPa)における水-メタノール-水素のガス透過試験を実施し、ゼオライト薄膜の分離特性の検討を行った。その結果、モルデナイト膜は水素,メタノールの透過を阻止し,水が選択的に透過した。いっぽう, ZSM-5は水存在下で水,メタノールが透過し,水素の透過を阻止した。このような高温でも機能を発揮する分離膜はこれまで例がなく、本研究による大きな成果である。
また、とくに、モルデナイト膜の水選択性の発現機構を検討するために、Na交換型モルデナイト結晶を用いて水蒸気、メタノールの吸着実験を行った。その結果、本実験のような高温下では、ゼオライトのアルミノシリケート骨格ではなく、交換カチオンであるNaと極性分子である水の強い相互作用によって水の吸着が起こり、水が細孔内に選択的に吸着するものと考えられた。しかし、いっぽうでメタノールもモルデナイト細孔に若干吸着することがわかった。モルデナイト膜によって、水素のみならずメタノールの透過も阻止される理由については、吸着特性のみでは完全には説明できず、ゼオライト膜の構造に踏みこんだ議論を進める必要があると推察した。