表題番号:2005B-183 日付:2006/03/26
研究課題建造物の狭隘壁面のヒビと変形の高精度画像計測に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 橋本 周司
(連携研究者) 大学院理工学研究科 客員研究助手 山口 友之
研究成果概要
本研究課題の目的は,原子炉など,安全のために常時監視を必要とし,しかも,人間が侵入不可能な建造物に対して,より安全に検査が行えるような自動計測技術を確立することにある.この目的を実現するためには,次の二つの具体的な研究が必要となる.1つは,建造物の安全性,危険性を的確に診断可能な高度の画像計測技術を確立すること,もう1つは,実際に人間が進入不可能であるような場所に侵入できる自動制御ロボット技術を確立することである.そこで,本年度は前者の画像計測技術の研究に注力した.
 建造物診断の一般的な指標には,コンクリート表面の「ヒビ」がある.実建造物のコンクリート表面像には,光ムラ,気泡,染み等の多くの雑音を含むため,通常の画像処理手法ではヒビのみを検出することが困難であるため,多くの課題が残っていた.そこで,本研究ではコンクリート壁面画像中に存在する「ヒビ」のような特徴には,近傍画素間で,画素同士が連結するような固有の特徴が「ヒビ」に存在すると考え,固体に液体が染み込む現象であるパーコレーション過程を画像処理としてモデル化した.このパーコレーションモデルをヒビ検出に適用することで,従来研究されているヒビ検出手法よりも,高精度なヒビ検出手法を実現した.また,本研究はメディアにも注目され,2005年7月29日の日本経済新聞にも採り上げられた.また,ヒビのみならず,提案したパーコレーションモデルは様々な画像処理として適用することができ,画像修復,エッジ検出,ノイズ除去,さらにはガラスの欠陥検出にも応用することが可能になった.今後は,人間が入れない狭隘部へ進入でき,精度良く位置決めが可能な壁面撮像用の移動ロボットを開発・製作し,実建造物の垂直なコンクリート壁面をも巡回検査可能なロボットへその技術を適用する.