表題番号:2005B-180 日付:2006/03/30
研究課題水中でのポリフェニレンオキシドの合成とグリーンポリマーとしての展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 西出 宏之
研究成果概要
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)(PPO)は、トルエン等の有機溶媒および銅-アミン錯体触媒を用いた2,6-ジメチルフェノール(DMP)の酸化重合により合成されている。研究代表者らはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムを酸化剤とし、塩基に水酸化ナトリウムを用いた完全な水溶媒でのDMPの酸化重合(高分子量のPPOの生成)に成功している。一方、銅錯体触媒はアルカリ水溶液中では水酸化銅となり失活する。本課題では、種々の耐アルカリ性銅錯体を探索し、触媒サイクルでの水を溶媒としたDMPの酸化重合により高分子量PPOを合成することを目的とした。
種々の水溶性銅錯体を触媒とし、水溶媒中、塩基に水酸化ナトリウムを用いて、DMPの酸化重合を実施した。水のpH、反応温度、界面活性剤種など反応条件を幅広く検討した結果、ジエチレントリアミン-N,N,N',N",N"-五酢酸(DTPA)銅錯体およびエチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸(EDTA)銅錯体を触媒とする酸化重合において、定量的に分子量1万以上の白色粉末状のポリマーが得られた。生成したポリマーは塩析等により水溶媒から析出するため濾過により容易に分離できた。得られたポリマー構造および物性は、有機溶媒を用いた従来法PPOと同等であった。銅錯体触媒は水相に溶解しているため、分離ポリマーの銅含有量は、従来法PPOに比べ極めて低い良好な値を示した。フェノールの銅-DTPAへの配位速度定数は、550 nm可視吸収の変化より5.0×10-5 M s-1で、銅-ピリジン錯体へのそれ(9.0×10-2 M s-1)に比べ低いが、重合は酸素吸収量の飽和より18時間で終了することを明らかとし、銅錯体触媒を用いた水溶媒中でのDMPの酸化重合を実証した。環境適合のエンプラ合成法として可能性を提示できた。