表題番号:2005B-179 日付:2006/12/12
研究課題事前情報を利用した適応型セミアクティブ免・制震構造の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 西谷 章
(連携研究者) 理工学術院 教授 前田寿朗
研究成果概要
 事前情報を活かした免震効果のセミアクティブ制御による高度化を目的として、計算機シミュレーションによる検討を行った。
 免震構造においては、免震層がゆっくりと大変形することで地震のエネルギーを吸収し、上部構造の層間変形が通常の建物の半分以下に抑えられる効果が生み出される。ただし、免震層が擁壁までのクリアランス以上に揺れてしまうと、衝突による衝撃が建物に加わり、悪影響を及ぼす。このため、気象庁の緊急地震情報のようなかたちで、直前に大きな地震到来の情報が得られれば、免震層の減衰を通常よりも大きく制御するなどの仕組みを備えたり、より制御工学的なリアルタイムのダンパー・セミアクティブ制御を行うことで、変形を抑えたり、さらに望ましくは変形を抑えながら加速度抑制効果も向上させるように、免震効果を効果的に発揮させることも可能となる。このような目的で、研究を実施した。
 まずは、減衰の変化が応答に及ぼす影響を定量的に把握した。減衰の切替えは免震層の応答を変化させることになるが、一般に免震層を形成する積層ゴムおよびダンパーの機械的性質(剛性、減衰係数、リリーフ荷重など)は製品によるばらつきが存在し、このばらつきを原因とした応答変動は避けられず、設計時点での応答予測値とは多かれ少なかれずれが生じる。このような応答の変動状況を定量的に評価しておけば、減衰を制御したときの応答予測のデータとしても、また応答変動を考慮したうえでの制御を構築するさいのデータとしても活用できる。このため、免震層の機械的性質のばらつきによる応答変動評価を行った。
 次に、当研究室で提案してきている可変スリップレベルダンパー型のセミアクティブ制御を適用する目的で、MRダンパーの使用を前提とした基礎的な検討を行った。非線形Maxwellモデルとして表されるMRダンパーを可変スリップレベルダンパーとして用いるときの、制御則の妥当性や履歴の性状について定量的な検討を加え、あわせて実験も実施している。
 また、事前情報を利用した制御を行ったときの、セミアクティブ制御効果に関しては、減衰係数を可変とする制御、リリーフ荷重を可変とする制御の両者を中心に、シミュレーションを実施し、その効果を確認した。