表題番号:2005B-177 日付:2008/05/22
研究課題石綿スレート板中の石綿無害化と無害化判断法の開発及び無害化物の再利用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 名古屋 俊士
研究成果概要
 アスベストを用いて加熱実験を行い、アスベスト(クリソタイル、カナダ産)を300℃~800℃まで電気炉中で加熱した時の温度とアスベストの構造変化を調べた。その結果、300℃から500℃では、X線回折図形に変化がなかった。600℃では、クリソタイルの回折線ピーク強度が減少傾向が認められた。700℃では、クリソタイルの回折線ピークがほぼ無くなり、非晶質状態になる。700℃以上ではクリソタイルの回折線ピークが完全に無くなりとともにフォルステラト等の生成が認められた。また、住宅屋根用化粧スレートとスレート波板において、施工されている中から30年程度経過したものと最近のものを選定し、これらの廃材を850℃で15分~1時間の熱処理と1400℃で15分間の熱処理を行い、廃材に含有されている石綿の非石綿化について検討を加えた。なお、1400℃での熱処理は、セメント原料としての利用の可能性を検討したものであり、廃材の原料中での添加率は、住宅屋根用化粧スレートでは10%と30%、スレート波板では10%と50%とし、それぞれ炭酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄及びケイ石により成分を普通ボルトランドセメントとほぼ等しくなるよう調整した。いずれの熱処理においても、Ⅹ線回折ではクリソタイルのピークは検出されず、一般的なⅩ線回折結果からは非石綿化が可能と判断された。従って、850℃熱処理においては、フィラーあるいはセメント原料としての利用の可能性が示唆された。
 現在、労働安全衛生法では、アスベスト含有率が1重量%を超えた場合が適用対象である。またPRTR法ではアスベスト含有率0.1重量%以上が適用対象となっているが、分析法は定まっていない。一般に、アスベスト含有率の分析はⅩ線回折分析法より行われており、定量下限は未処理試料で1%程度であり、処理した試料でも、Ⅹ線回折装置の限界も考慮に入れると0.1重量%程度と考えられている。したがって、アスベストが少々含まれていたとしても、Ⅹ線回折ピークはこれ以下では認められない。一方、顕微鏡による分析法は、アスベストの定量は難しいものの、試料中にごく微量のアスベストが含まれている場合でも、見出すことは可能である。アスベスト含有窯業系廃材を熱処理し、含有アスベストを「非アスベスト化or消失」させて再資源化する場合には、かならずしも1重量%あるいは0.1重量%の基準に沿ったものとする必要はないと考えられる。このため、アスベスト有無の判定法は、先の基準及び分析上の定量下限(0.1質量%)よりも一段と厳しく考え、定量下限のⅩ線回折ピークの確諷に加え、一分析試料につき顕微鏡による視野数100を観察して1本のアスベスト繊維も確課されないことにした。