表題番号:2005B-174 日付:2006/02/14
研究課題固体及びクラスター表面反応のダイナミクスに関する理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中井 浩巳
研究成果概要
本特定課題研究では、分子軌道(MO)法や密度汎関数理論(DFT)などの第一原理手法を用いて、固体及びクラスター表面の触媒作用や機能発現の電子的機構を明らかにすることを目指した。さらに、第一原理計算に基づいた力場を利用して分子動力学シミュレーションを行うAIMD法により、表面反応のダイナミクスに関しても定量的な解析を目指した。具体的には、 (1)歪みシリコン表面の機能発現機構、および(2)星間分子衝突反応のダイナミクスとエネルギー移動、を当初の検討課題としていた。研究テーマ(1)では、ガウス基底を用いた周期境界条件(PBC)計算によって歪みシリコン表面の幾何構造及び電子状態を解明し、機能発現機構を理論的に検討した。特に、これらの理論的解析において、我々が独自に開発したエネルギー密度解析(EDA)をPBC計算と組み合わせること(PBC-EDA)の有効性が確かめられた。PBC-EDAの開発は、本プロジェクトと平行して行われ、まず種々のMgO表面(100)および(n10) (n=1-6)に対して応用された。そこでは、キンクやステップといった表面の各サイトの安定性や反応性を定量的に評価することに成功した。歪みシリコン表面に対しても、PBC-EDAにより歪みの影響を定量化することができた。研究テーマ(2)では、シアノラジカルとさまざまな不飽和炭化水素の衝突反応についてAIMDシミュレーションを実行し、そのダイナミクスとエネルギー移動を検討した。ここでは、上記のEDAをAIMDと組み合わせることにより、局所エネルギー変化の自己相関関数を求めることができ、さらにそれを短時間フーリエ変換(STFT)することにより化学反応におけるモード選択的なエネルギー分配のメカニズムを明らかすることができた。