表題番号:2005B-173 日付:2006/02/14
研究課題酸化チタン表面上での光エネルギー変換及び光触媒作用の電子的機構に関する理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中井 浩巳
研究成果概要
本特定課題研究では、酸化チタン表面上での光エネルギー変換及び光触媒作用の本質を分子軌道(MO)法や密度汎関数理論(DFT)などの第一原理計算手法により解明することを目指した。具体的には、 (1) 修飾された酸化チタン表面の幾何構造及び電子状態、および(2) 酸化チタン表面における光分解反応、を検討課題とした。研究テーマ(1)では、ガウス基底を用いた周期境界条件(PBC)計算によって天然に存在する酸化チタンが持つ3つの結晶構造(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト)に電子状態を検討した。特に、各結晶構造に対してそれぞれ3種類の表面構造のPBC計算を行った。特に、これらの理論的解析において、我々が独自に開発したエネルギー密度解析(EDA)をPBC計算と組み合わせること(PBC-EDA)で、表面とバルクの違い、結晶構造および結晶表面の違いによる安定性や反応性の違いを定量的に評価することに成功した。また、酸化チタンにB, C, Sなどの半金属や非金属イオンを注入することにより、可視光領域に吸収を示すことが期待されている。そこで、酸素欠陥型TiO2-X(X=B,C,S)に対するPBC計算を行い、それらのバンド構造を検討した。特に、BおよびCの注入により、価電子帯の上部に新たに準位が生じ、結果としてバンドギャップが小さくなることが示された。研究テーマ(2)では、クラスターモデルを用いて、水、メタノール、そしてギ酸の分解反応を理論的に検討した。熱反応(基底状態)に加えて、光反応のモデルとして、イオン化したクラスターの反応性を検討した。その結果、熱反応に比べ光反応では容易に反応が進行することが確かめられた。