表題番号:2005B-170
日付:2006/03/09
研究課題時系列解析と統計的金融工学の総合的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 谷口 正信 |
- 研究成果概要
時系列解析において非線形、非定常、非正規確率過程に対する局所漸近正規性の証明を行いこれに基づく最適推測、検定、判別の
基礎理論を構築した。また時系列解析における経験尤度法、局所 Whittle 尤度に基づく推測論等の基礎理論も発展させた。
局所 Whittle 尤度に基づく、スペクトル推定量は、簡単な母数型スペクトルを適合して、その母数を周波数に依存させる形で
推定量を得た。これは、従来の非母数的なスペクトル推定量を最小2乗誤差の意味で改善する等のよさをもつことが、数値的にも
示された。経験尤度法では従来のスペクトル型が明示的にわかっているという状況でなくても、種々の時系列指標の信頼区間を
与えることが可能になり、これも従来の時系列解析に新しい手法を提案することができた。
応用面では、最適ポートフォリオ係数の漸近有効な推定量で推測することを試み、従来とは異なったより一般的な仮定;収益率過程
は(1)非正規定常過程、(2)非正規局所定常過程に対して、従来の推定量の漸近有効性と、(1)と(2)の仮定のもとで
ポートフォリオ係数の漸近有効な推定量を提案した。これは時系列解析の理論結果の金融工学への応用である。
また、時系列の判別手法を非正規、非定常過程に応用し、時間依存するスペクトル密度関数の擬距離を用いて種々の企業の
株価データをクラスター解析し、金融工学における格付けが、このような時系列構造をもつデータに関しても可能であること
がわかった。従来の格付けは独立標本の判別解析に基づいており、このような手法は新しいアプローチとなる。